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千里山幾何学研究会

 日程:2023年6月24日(土)、25日(日)

 場所:関西大学千里山キャンパス第4学舎3号館3401

 プログラム

  6月24日(土)

   14:00~15:30 森吉仁志(名古屋大学)「コース幾何学と指数定理--カントール集合をコロナ空間として--」 

     概要:非コンパクトな距離空間 X にコース構造 (coarse structure) が与えられると,X の無限遠方空間(コロナ空間と呼ぶ)が定まって,コロナ空間
        への近づき方が統制(コントロール)を受ける.粗く言うと,コース構造は「空間のコンパクト化」を定める.この講演では,カントール
        集合をコロナ空間とするような距離空間,例えば二分岐を繰返す樹木 (binary tree) や曲面 (binary tube) を考えて,そのような非コンパクト空間
        上での指数定理について考察する.

   16:00~17:30 小林真平(北海道大学)「多次元正規分布に対する甘利-Chentsovのアルファ接続の特徴づけ」

     概要:本講演は北海道大学の大学院生,大野優との共同研究に基づく (arXiv:2302.07471).情報幾何学において,統計モデルのなす統計多様体の
        甘利-Chentsovのアルファ接続は最も重要な概念である.一方,特別な統計多様体に対して,リー群の作用を導入でき統計リー群(よりひろく
        は等質統計多様体)が定義できる.井ノ口氏と古畑氏との共同研究において,正規分布がなす統計多様体には,統計リー群の構造が存在し,
        その甘利-Chentsovのアルファ接続は,曲率の共役対称性(R = R^*)で特徴づけられることを示した(2021, Information geometry). 本講演では,
        この特徴づけが多次元正規分布のなす統計多様体にも正しいことを示す.

  6月25日(日)

   10:30~12:00 成田知将(名古屋大学)「コンパクトケーラー多様体上のラプラシアンの固有値最大化問題」

     概要:与えられたコンパクト多様体 M において, 体積が 1 となるようなリーマン計量全体を考える. このとき, 計量から定まるラプラシアンの最小正
        固有値は, そのような計量全体の上の汎関数とみなせる. Nadirashvili (1996) は, 計量 g がそのような固有値汎関数の臨界点であるとき, ラプ
        ラシアンの固有関数たちが (M,g) の球面への等長極小はめ込みを与えることを示した. Apostolov-Jakobson-Kokarev (2015) は, リーマン計量
        全体ではなく, コンパクトケーラー多様体においてケーラー類を固定して固有値汎関数の臨界点を調べた. 本講演では, コンパクト複素多様体
        において, 体積が 1 となるようなケーラー計量全体を考え, 固有値汎関数の臨界点について考察する. とくに, NadirashviliやApostolov et al. の
        結果との共通点や相違点を, 例を挙げながら述べる. 本講演はプレプリント arXiv:2304.06261 の内容に基づく.

   14:00~15:30 赤嶺新太郎(日本大学)「ミンコフスキー空間内の時間的極小曲面の等長類と反等長類について」

     概要:平均曲率を保ったまま等長変形が可能な Bonnet 曲面のうち,ユークリッド空間内の極小曲面は剛性「互いに等長な単連結極小曲面は一方が
        他方の同伴族に含まれる曲面と合同になる」という性質を持つことが Schwarz によって示されている.一方で,曲面がローレンツ計量を持つ
        場合は,曲面上には臍点の他にも擬臍点と呼ばれる型作用素が対角化できないような特殊な点が発生すること,および等長変形以外にも
        誘導計量を −1 倍する反等長変換が存在すること,といったように正定値計量を持つ場合とは様々な異なった状況が現れる.本講演では,
        ローレンツ計量を持つ場合であるミンコフスキー空間内の時間的極小曲面に対して,Schwarz の剛性定理と同様の主張が成り立つかどうかを
        考察する.また,関連した話題として,上記の等長変形や反等長変形を含む各種の変形で時間的極小曲面の対称性がどのように保存されたり,
        移り変わっていくかを考察する.本講演の内容はプレプリント arXiv:2305.04552 の内容に基づく.

   16:00~17:30 伊師英之(大阪公立大学)「ジョルダン代数と情報幾何」

     概要:正定値実対称行列全体のなす凸錐は,数理統計や最適化理論においても基本的な対象であり,その研究において凸錐上の不変リーマン計量や
        双対接続といった情報幾何的な構造は有効な道具となる.本講演では,双対接続に関する二重自己平行部分多様体がジョルダン代数の部分
        代数と密接な関係にあることを示し,そのような部分多様体の例として色付きグラフィカルモデルとよばれる統計モデルを紹介する.これは
        小原敦美氏(福井大学),土谷隆氏(政策研究大学院大学)との共同研究である.    

 アクセス

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