環境心理学について

1.環境心理学(Environmental Psychology)の位置づけ

○刺激(S)マ反応(R)の発想の拡張の必要。環境の作り替えと集団的共有、伝承。図式形成の過程をつうじた、文化ループ。

 

    

○環境心理学は、1970年代のはじめに成立した学際的分野で、心理学以外の関連する学問は、建築学、人間工学、人類学、地理学、などである。現代の心理学では環境心理学のテーマは、空間の認知や行動の諸問題が認知心理学で、人工環境における対人関係や集団行動が社会心理学で、それぞれ研究されている。ただし、認知心理学や社会心理学の研究は、基本的には刺激(S)マ反応(R)の発想によるものであり、環境のつくりかえ、図式形成による文化ループは射程外になる。環境の文化ループの諸問題に、実践的な課題としてとりくんでいるのが、建築学、人間工学などの工学系の分野である。人類学、地理学では、文化比較という観点から、環境の文化的側面を研究している。環境心理学は、心理学的な研究を基盤にそれを拡張して、環境の文化的側面やデザインの問題をあつかう。この拡張の基本になる発想が、環境の文化ループの発想である。

 

2.環境心理学の古典(年はもとの本の出版年次)

1960年 リンチ 「都市のイメージ」 岩波書店

 建築学者による認知地図研究の出発点となった本。

1966年 ホール 「かくれた次元」 みすず書房

 文化人類学者による、プロクセミクスの提唱。

1969 ソマー 「人間の空間」 鹿島出版

 心理学学者による、対人関係を規定する要因としての空間デザイン論。

1974 イッテルソン・プロシャンスキー・リブリン編

 「環境心理学(全6巻)」 誠信書房

 上述の著者の著作などを中心として、心理学、建築学、人類学とはばひろく、環境心理にかんする重要論文をあつめた本。1960年代までの先駆的な研究をふまえた、この本の編集出版を、環境心理学成立のメルクマールとみることができる。

 

○基本事項の確認: 環境心理学の歴史と関連分野、S-R心理学と文化ループ、環境心理学の古典(書名とおよその内容)