映像と音の意味作用についてのメモ

 

1.映像の意味作用

1.1.映像の種類

○実写映像(フレーム・アングル・照明・フォーカス・ショットのつながり)

○CG処理映像(コラージュ・変形・強調)

○アニメ

○文字

 

1.2.映像の意味作用の4レベル

@感覚的例示(構図・空間周波数構成・色調・うごき・・)空間周波数構成:周波数ごとのパワー分布 一定(ノイズ的)、1/F(快適)、1/(F*F) (略画的)

A比喩的例示(沈んだトーン・安定した構図・・)

B外延指示(老人・少女・街角・鉄格子・海岸・雲・・)

C含意(鉄格子による自由の剥奪の隠喩表現・荒れる海によるエネルギーの隠喩表現・ベッドのわきの紙幣による売春の換喩表現・・)三種類の比喩:類似による隠喩(月見うどん・鯛焼き)・隣接による換喩(きつねうどん・たこ焼き)・包含による堤喩(親子ドンブリ・お好み焼き)

 

2.音の意味作用

2.1.音の種類

○映像のなかの音

 ・内在的声:人物の発話・内言

 ・内在的出来事音:出来事の音

 ・内在的音楽:映像のなかでながれる音楽

○映像に付加される音

 ・付加的声:ナレーション

 ・付加的出来事音:映像の出来事に物理的に帰属できない効果音

 ・付加的音楽:バックグラウンドの音楽

 

2.2.音の意味作用の4レベル

@感覚的例示(ピッチ・音色・つよさ・つよさの輪郭・・・)

A感情的例示(あかるい音・おちつかない音・・)

声の場合: ピッチ高=宥和的/ピッチ低=威嚇的、ノイズ・子音性のたかい音色=感情の隠蔽/協和性・母音性の高い音色=感情の表出、ゆっくりとよわくなる音=肯定的/急にたちきれる音=否定的。音楽の場合:長調=あかるい/短調=くらい。効果音の場合はどうか。

 音の場合、一般的な態度できくひとには@とAは区別しがたい。映像が感覚属性を分析的に例示するのにたいし、音は感覚効果と感情効果がより一体化している。

 

 

B外延指示(電話のベル・クーラーの音・ウシの鳴き声・・・) 

C含意(ウシの鳴き声によるのどかさの比喩的表現・クーラーの音による閉塞感の比喩的表現・・・)

 音としての外延指示とその比喩による含意が問題になるのは、出来事の音の場合である。声については、言葉としての外延指示と含意になる。音楽の場合、外延指示はあるのだろうか。言葉と音楽については、だれの言葉であるとか、どんな音楽であるとかいったラベルをはることができる。これは、@の感覚的例示とはことなる、概念的例示である。

 以上の意味作用は、映像のなかの音と映像に付加される音でどうことなるのだろうか。

 

3.表現の心理効果の次元とうけとりかたの様態

○SD法などによると 肯定的⇔否定的がもっとも重要。つぎが、大きい・強い⇔小さい・弱いの力量の次元。つぎが、速い・若い⇔遅い・老いたの活動性の次元。

○表現のうけとりかた

  即自的感染⇔対峙的反応

即自的感染:怒りの表現をうけとり自分も怒りの感情をいだく

対峙的反応:怒りの表現をうけとり自分は怯えの感情をいだく

 即自的感染か対峙的反応かは、表現の種類、感情の種類・強度、送り手と受け手の関係によってどうかわるか。

 

4.映像と音の関係

○@の例示は、映像と音ともに、文脈の影響をうけにくい。感情的効果としては、@とAが融合している音のほうが主になると予測できる。これを、事例や実験でうらづけることはできるのか。また、映像の種類と音の種類の、すべてのくみあわせについてはどうなのか。

○人間の認知は、視覚が、音や触覚にたいして優位である。腹話術にしめされる音源定位における視覚の優位。プリズム実験における触覚にたいする視覚の優位。これらの知見からすると、Bの外延指示で、出来事の音は映像にしたがうように帰属して認知されると期待できる。しかし、映像と音がおおきくずれたらどうなるのか、付加される効果音や効果のくわわった映像の場合はどうなのか。

○Cの比喩的な含意は、おおくの可能な比喩的な延長のなかから、文脈に依存してえらばれる。もっとも可変的で、受け手によってことなるだろう意味成分である。Cのレベルの解釈の枠となる文脈を提供するうえで、よりつよいのは、映像だろうか、音だろうか。映像や音の種類、表現される感情の種類によって、複雑な相互依存の関係があるのだろうか。おなじBによる外延指示が、文脈によってことなったCの含意をもった例にはどんなものがあるだろうか。相互依存の関係があるとしたら、どう定式化できるだろうか。