2004年度日本心理学会第68会大会で、ソシオン理論のシンポジウムが開催されました。下は、シンポジウムの概要とプレゼンテーション用の資料です。
ソシオン理論の展望―-アイデアから研究プロジェクトへ― 最初にソシオン理論が発表されたのは、1990年関西大学社会学部紀要の木村・藤澤・雨宮の共同論文である。ソシオンという言葉は、NEURAL NETWORKの素子がNEURONなら、SOCIAL NETWORK の素子はSOCIONだろうというアナロジーによっているようにSOCIAL NETWORKでのシミュレーションを念頭においたものだった。現在では社会的相互作用について種々のシミュレーションが行われているが、これは、当時としてはかなり先駆的な試みだった。
ソシオン理論の特徴は三つあげられる。(1)ネットワークから出発し個体としてのソシオンを位置づけようとする関係モデルである。(2)ネットワークの関係として、好悪をより一般化した荷重という一次元の量を前提とする。(3)ソシオン間の関係とそのソシオン内での表象という複数の関係のレベルとその対応を扱う。
藤澤等、小杉考司、藤澤隆史、水谷聡秀、石盛真徳などは、ソシオン理論における(1)と(2)の特徴に基づいて、小集団の集団力学のシミュレーションや関連する心理学的変数の測定についての研究を行ってきた。木村や渡邊などは、(3)もあつかいソシオン間の関係とその個体内の表象のズレもふくんだ、二者関係と三者関係をとりあげ、図解と事例の解釈によって社会的関係のなかの自己や感情の力学についての独自の展開を試みており、(2)の荷重概念に基づくメディア分析も行っている。今回のシンポジウムでは、まず雨宮がソシオン理論の研究の流れについて簡単な概観を提示する。つぎに、二者関係について石盛真徳が「ソシオン理論の二者関係モデルの実験的検討」を、三者関係について小杉考司・藤澤隆史が「バランス理論と固有値分解」、水谷聡秀が「ソシオン理論における三者関係のシミュレーション」を、家族関係について藤澤等が「家族関係へのソシオン理論によるアプローチ」をそれぞれ発表する。続いて、木村と渡邊が、彼らのアプローチの成果について報告する。
ソシオン理論は、欧米からの輸入ではない理論構築の試みとしては、日本では珍しい例かもしれない。本シンポジウムでは、多面的な展開をしめしつつあるソシオン理論の研究者が一同に会し、研究の成果の要点を述べ、今後の課題について、社会関係の数学的モデル化とその実証の領域の第一線の研究者をコメンテーターにまねき、ソシオン理論を研究プロジェクトとして本格的に離陸させるには、何が必要なのか議論したい。
雨宮俊彦「ソシオン理論の展望」(PowerPointファイル140K)
石盛真徳「ソシオン理論の二者関係モデルの実験的検討」(PowerPointファイル1500K)
小杉考司・藤澤隆史「バランス理論と固有値分解」(PowerPointファイル364K)
小杉考司・藤澤隆史「Dyad,Triadの記法」(PDFファイル252K)
水谷聡秀「ソシオン理論における三者関係のシミュレーション」(PowerPointファイル280K)
藤澤等「N人関係のデータ構造と家族関係の分析」(PowerPointファイル224K)
渡邊太「社会現象の3者関係論的記述」(PowerPointファイル596K)
木村洋二「2者関係と3者関係における信頼と不信のネットワーク・ダイナミックス」
関西大学社会学部紀要32号(2001)のソシオン特集号をここからダウンロードできます
木村洋二「ソシオンの一般理論IIIートリオンからソシオスへー」(PDFファイル904K)
木村洋二・渡辺太「親・子・カルトのトライアッドー信者と家族と教団のソシオン・ネットワーク分析ー」(PDFファイル272K)
木村洋二・松尾繁樹・渡辺太「イジメのモードとネットワークの力学ー排除のソシオン理論をめざしてー」(PDFファイル152K)
木村洋二・増田のぞみ「マンガにおける荷重表現ーページの「めくり効果」とマンガの「文法」をめぐってー」(PDFファイル556K)