グローバル化が進む今日、社会の内側で増大する異なるアイデンティティを持つ集団のいずれもが、対等に政治制度に組み入れられ、公正に代表されているかどうかは、日本を含め、多くの民主国家が直面している挑戦である。また、民主主義を担うべき多様な主体が自ら政治に関心を持ち、民主政治を実現していく意欲だけでなく、そのための能力をも十分に備えた状態にあるかどうかは、それらの社会にとって実質的な民主社会を持続させていく上での緊要な課題となっている。本研究は、いまだに多文化共生社会としての認識が薄い日本において、将来的に公正な民主政治を担う世代に、どのような政治教育をおこなうことが必要であるかという問題意識に立っている。既に多文化共生社会としての現実と直面し、研究の進んでいるアメリカ、イギリス、フランスの事例を比較研究することで、政治の中枢から周縁への空間的な広がりとして存在するマイノリティ集団の政治参加が、どのような論理で規定されているかを考えていく。さらに、グローバル化の進展や近年のテロとの戦争によって、これらの社会での論理が中枢において揺さぶられ、公正さからむしろ後退している状況を押さえる必要がある。そうした揺れの中で政治意識を形成していく今日の若年層にとって、周縁からの政治参加を促していくにはどのような政治教育が求められているかを考えていく。本研究では、政治参加の規範と現状を並行して分析するだけでなく、そこから得られた結果を実際の教育現場に応用しながら検証していく。
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