科学研究費補助金 基盤研究(C)
令和2〜6年度「アメリカの連邦・州・地方政体間の複合的対立の要因と共通空間の模索」
課題番号 20K01461


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研究概要

連邦議会における党派的対立のため、20世紀末から移民法改正が実現できていないアメリカでは、市民社会がリベラルな地方政体と協働しながら移民、特に法的権利を認められていない非合法滞在者のコミュニティへの実質的な包摂を試みてきた。ところが、保守的な州による地方政体への牽制の強化が、共和党多数派議会、さらには共和党政権が示す移民の権利を制約する方向性と相乗効果をもって、その進展を妨げているのが現状である。本研究では、こうした連邦と州、州と地方政体という二つの組み合わせで複層的に存在する対立構造を、連邦制度のあり方をめぐる理論的な分析枠組みと、アメリカの政党制度の変容をめぐる歴史的な知見に基づいて明らかにする。その上で、各政治レベルにおいて実施する聴き取り調査を通して移民政策の実態を分析し、移民をめぐる市民社会と政治の協働に及ぼされる影響について検証していく。 

価値の両極化が進み、異なる立場を受容する公共空間が狭まる今日のアメリカ社会において、党派的な対立は従来の社会経済的要素のみでなく、地理的要素とも呼応する。その背景には連邦制度の下で州の持つ権限が、政策領域における連邦政府との分掌を担保すると同時に、州内の下位政体の意思決定への牽制を可能にしてきた実態がある。特に20世紀後半からの南部戦略で州政府の多数派を占める共和党と、マイノリティが集住しがちな地方政体のリベラルな政策とは対立し、州政府が都市を牽制するという構図が増加している。連邦議会が対応できていない移民政策をめぐり、州と都市の政治がどのように共通空間を生み出せるかを検討していく。


研究組織

代表者
  大津留(北川)智恵子(関大大学法学部教授)


補助内定金額(直接経費)

令和2年度   80 万円
令和3年度   60 万円
令和4年度    70 万円
令和5年度   60 万円
令和6年度    60 万円

合 計      330 万円