M情報セキュリティ特論(2023年度)
学部配当科目「情報セキュリティ論」では,多岐にわたる情報セキュリティの内容を,網羅的に説明した.本講義では,テーマを絞り,教員の専門分野であるマルチメディアセキュリティ技術を中心に議論する.プライバシー・個人情報の保護技術,情報の正真性に関わる様々な技術について教員が紹介する.履修者は各種技術を理解すると同時に,本講義に関係する以下のテーマから1つ選択し,輪講形式で進めることで,そのテーマへの理解を深化させる.
- 「数学論」は,情報セキュリティ技術の基礎となる数学を学ぶ.具体的には,公開鍵暗号方式の一つであるRSA暗号や画像・メディア解析を理解するために,群論やフーリエ変換・ウェーブレット変換などを扱う.
- 「マルチメディア」は画像・映像に利用される情報ハイディング技術(ステガノグラフィ・電子透かし)を取り扱う.なお,これらの技術を理解するためには,フーリエ変換・ウェーブレット変換などの数学の知識が必須となる.
- 「個人情報・プライバシー」は,近年話題となるプライバシーの定義からその成り立ち,法律論まで,様々な角度から個人情報・プライバシーを議論する.
- 「機械学習」は,最新の深層学習も含め,データ解析に必須となる機械学習全般を学習する.
なお,状況に応じてプログラミングも行う.
到達目標
1)知識・技能の観点
- マルチメディアセキュリティに関わる様々な技術を理解する.
- 選択したテーマの内容を正しく理解する.
2)思考力・判断力・表現力等の能力の観点
- マルチメディアセキュリティならびに選択したテーマの内容を,他人に論理的にかつわかりやすく文章で説明する.
- 選択したテーマの内容を,他人が聞いて納得できるように説明する.
3)主体的な態度の観点
- 各課題に主体的に取り組むだけでなく,時事に関心を向け,マルチメディアセキュリティや選択テーマに対するより最新の知見を主体的に調べる.
授業計画
第1回 |
ガイダンス(テーマの選択),マルチメディアセキュリティ技術の紹介 |
第2回 |
プライバシー・個人情報保護技術(I):アクセス制御技術・認証技術その1 |
第3回 |
選択テーマによる輪講(I) |
第4回 |
プライバシー・個人情報保護技術(II):アクセス制御技術・認証技術その2 |
第5回 |
選択テーマによる輪講(II) |
第6回 |
プライバシー・個人情報保護技術(III):匿名通信技術その1 |
第7回 |
プライバシー・個人情報保護技術(IV):匿名通信技術その2 |
第8回 |
選択テーマによる輪講(III) |
第9回 |
プライバシー・個人情報保護技術(V):個人情報の匿名化技術 |
第10回 |
暗号技術,情報ハイディング技術 |
第11回 |
選択テーマによる輪講(IV) |
第12回 |
機械学習を用いた情報の正真性を保証する技術(I) |
第13回 |
機械学習を用いた情報の正真性を保証する技術(II) |
第14回 |
選択テーマによる輪講(V) |
第15回 |
選択テーマによる輪講(VI)・総括 |
授業時間外学習
選択テーマによる輪講では,学生は時間外にそのテーマに関する参考書を読解し,学習する必要がある.また,その内容を発表する必要がある.
教員による講義では,各回の講義終了後,進捗状況に応じて課題を課す.
成績評価の方法・基準・評価
定期試験を行わず、平常試験(小テスト・レポート等)で総合評価する.
平常点40%(輪講による発表25%を含む),2回のレポート60%.レポートについては,教員が紹介する技術に関係するレポートと選択テーマに関係するレポートを予定.
1)知識・技能の観点
- マルチメディアセキュリティおよび選択したテーマの内容への理解度を評価する.
2)思考力・判断力・表現力等の能力の観点
- レポートの内容やその展開力・表現力,問題意識,さらには脚注・参考文献も含めたレポートとしての体裁の適切さを評価する.
- プレゼンテーションの内容だけでなく,展開力や説明力,資料の完成度を評価する.
3)主体的な態度の観点
- 輪講や各課題に対する取り組み方を評価するだけでなく,日常的にマルチメディアセキュリティや選択テーマに対する時事を調べ,各分野に対する最新の知見を調べ,さまざまな課題を主体的に解決しようとする姿勢を評価する.
教科書
とくに指定しない.ただし,必要に応じて,講義資料を配布する.
参考書
- S.C. コウチーニョ『暗号の数学的基礎』(Springer・フェアラーク東京,2001年) 978-4621062869
- 金谷健一『これなら分かる最適化数学ー基礎原理から計算手法までー』(共立出版,2005年)978-4320017863
- 金谷健一『これなら分かる応用数学教室ー最小二乗法からウェーブレットまでー』(共立出版,2003年) 978-4320017382
- 松井甲子雄,岩切宗利『情報ハイディングの基礎―ユビキタス社会の情報セキュリティ技術』(森北出版,2004年) 978-4627828315
- 青柳武彦『情報化時代のプライバシー研究』(NTT出版,2008年)978-4757102385
- 中井悦司『[改訂新版]ITエンジニアのための機械学習理論入門』(技術評論社,2021年) 978-4297122331
- 小川雄太郎『つくりながら学ぶ! PyTorchによる発展ディープラーニング』(マイナビ出版,2019年)978-4839970253
- 小向太郎『情報法入門【第6版】』(NTT出版,2022年)978-4757104020
マルチメディアセキュリティに関係する各種参考書,履修者の選択するテーマに関する他の参考書は適宜紹介する.
フィードバックの方法
ほぼ1対1の形式になるため,授業中であっても学生の理解度を確認しながら進める.各課題や輪講での発表の完成度を見て,教員の考えを述べることで,履修者の成長を促す.
担任者への問合せ方法
オフィスアワー
・授業前後か,もしくはアポをとっての別時間での対応
その他
・個人研究室への直接訪問かメールによる連絡(メールアドレスは社会安全学部HPを参照)
備考
- 指導教官との話し合いの結果,選択することになるかと考えられるが,事前にどのテーマをしたいのか(もしくは別テーマか)を把握したいため,可能なら受講前に一度,河野まで連絡をお願いしたい.
- 受講人数にもよるが,場合によっては受講者が希望する日時に講義日を変更する場合がある.
- 授業への出席は必須である.
- 必要な資料などはすべて関大LMSにUPして共有する.
- 基本的に理系の講義であるため,数学・工学(プログラミングなど)の理解が必要となる.特に最新の研究を知るために,図書ではなく論文が読める(数式が読める,英語が読める)必要がある.
- 本講義は,情報セキュリティとは何かを大まかにでもわかっていることを前提に,より詳細な内容を議論する科目である.もし情報セキュリティとは何かを知りたいのであれば,学部配当科目「情報セキュリティ論」を受講してもらいたい.そのうえで,詳細かつ最先端な内容を知りたいとなったときに,本講義を受講してもらいたい.
なお,大学院の授業であるが,BYOD[ノートPC]の必要についても記載する.
- プレゼンや資料共有のため,BYOD[ノートPC]を使用する場合がある.
- プレゼンの場合,希望に応じてノートPCを教員側で準備する.