社会科学概論受講生の皆さんへ

 大変遅くなりましたが、前期提出された小レポート、『大学を学ぶ』レポートを返却します。また、成績評価基準・方法について説明し、『大学を学ぶ』レポートについて総括的にコメントします。尚、第1章第3節1の執筆者である近藤郁夫先生(愛知県立大学)、第1章第3節2の執筆者である岡本博公先生(同志社大学)、第3章第1節・第2節の執筆者である細井克彦先生(大阪市立大学)から返事が来ましたので、その返事を同封しています。

(成績評価基準・方法)

 6月21日に配布した「今日の社会科学概論」の通り、評価は毎回提出の小レポート(100点満点計算で20点配点)と『大学を学ぶ』レポート(論文試験)(同80点配点)に基づいて行いました。

 毎回提出してもらった小レポートの配点20点の付け方ですが、これは「これまでのレポートに対するコメント」(7月5日配付)に記されている通り、出席(小レポートを提出)していれば1回につき1点加点し、さらに小レポートの内容を見て、授業内容が正しく理解されいて批判的に捉えられているものについては1回につき1点加点しています。

 『大学を学ぶ』レポートの評価基準は、「社会科学概論論文試験」(6月14日配布)にある提出要件を満たし、(1)著者の主張を正しく把握できているか、(2)著者の主張を相対化できているか、(3)これまでの学生生活の振り返り(客観的に評価すること)ができているかです。その詳細を説明しましょう。まず、序章、1章、2章、3章の各章について引用・コメントされていると各15点(配点:15 x 4 = 60点)注1 。著者の主張を正確にとらえ、そして相対化できている場合には10点加点、これまでの学生生活の振り返りができている場合には10点加点しました。尚、提出要件を満たさないレポート(2章や3章についての記述がない、提出期限後に提出等)は、減点しています。

(『大学を学ぶ』レポートについてのコメント)

 多くのレポートが真摯に率直に書かれており、どっしりと読みごたえのあるものでした。受講生それぞれが大学という空間で、大学とは何か、自分とは誰かという問いに対ししっかり向き合い、いろいろなことを考え、悩んでいるんだなあと改めて感心しました。考え続けること、悩み続けることが大事です。それが学ぶということであり、生きるということですから、行動しながら多いに考え悩み続けて下さい。またレポートによって現在の関大商学部第2部をとりまく環境がより鮮明に理解でき,感謝しています。

 ただ印象として、全体的に「何をやっても無駄だ」といったあきらめが感じられ、物事に対して悲観的である点が気になりました。これは特に高卒で入学してきた学生に広くみられます。「自分は2部学生だから」「自分にはできない」という思いが非常に強いように思います。自分をそう簡単に見限ってしまっていいのですか?本来高い能力を持っていながらそれを発揮できないのは、「自分の能力はこんなもんだ」と自分を見限っているからです。あきらめないこと、これが能力発揮・自己変革の秘訣です。<あきらめるな、やればできる>です。

 上記のことと関連していると思いますが、「世の中こんなもんだ」ともうすでに決めつけ、思い込んでしまっている学生もみられました。確かにそう決めつけ、思い込んでしまえばそれ以上考えなくても済みますのでラクかもしれません。しかしそうした「決めつけ」や「思い込み」に今度は逆に自分の方が縛られてしまって、自分の持っている価値観や世界観と違う人とはコミュニケーションできなくなってしまうのではないのでしょうか。様々な人々とのコミュニケーションなしに自分を高めることはできません。

 もう一つ気になった点は、これまでの自分の学生生活の振り返りをしてほしいと授業で言いましたが、他人事のようにレポートを書いてしまう受講生(特に社会人学生)が目立ったことです。これは自分を突き放して見る(客観視する)ことから逃げているように思えました。

 これら3つのことは実は根は同じ、つまり自分というものを客観的かつ多面的に評価することができないからではないのでしょうか。換言すれば、視野がまだまだ狭く、限られた価値尺度しか持ち合わせていないのではないのでしょうか。もっと視野を広げて、より多くの価値尺度を身につけて欲しい、そう思います。その点では、大学は自分とは違ったものの見方・考え方(価値観・世界観)に触れ、これまでの自分を振り返り、自分を変える場ですから、うってつけのところです。大学という空間で視野をどんどん広げて自分を変えていってください。

 最後にレポートの体裁についてですが、人に読んでもらうということを全く想定してないレポートがありました。手書きの場合、丁寧に書くことが求められますし、ワープロでは読みやすいレイアウトが求められます。授業におけるレポート(論文試験)は単位取得のためと割り切っている関係からかもしれませんが、読み手がいることをお忘れなく。

 

 レポートで出された意見や質問の全てにこのプリントで答えることは難しいので、聞きたいこと、言いたいことがあったら、また今度研究室にコーヒーを飲みに来て下さい。研究室直通電話は***-****です。

 それではよいお年を。

社会科学概論97年度前期担当 長谷川 伸

 1997年12月20日


注1 ちなみに2章についての記述がないレポートは1点、3章についての記述がないレポートは4点でした。