テーマ:「大阪市立大学電子出版システム」
発表者:北克一(大阪市立大学)
日時:1997年6月28日(土)15:00〜17:00
会場:大阪市立大学学術情報総合センター
<はじめに>
今回は、本年10月に完成を予定している大阪市立大学電子出版システムの設計思想および仕様についての報告がなされた。このシステムは、大阪市立大学内において生産される雑誌(紀要論文)および図書(情報処理教育テキスト)の執筆から編集そして出版までの作業の中で、共同執筆以降の作業をデジタル化することにより、各工程の作業効率を向上させ、出版/公開までの期間を短縮することを目的として設計されたものである。設計に際しては、ワープロで文書作成が可能なレベルの執筆者にも十分に利用可能であること、編集作業についても簡単なキーボード操作のみによって実現できること、の2点が重要な前提条件となっている。
<システムの概要>
このシステムのプロセスを簡略化すると次のようになる。
<システムの主な特徴>
各プロセスについての説明の中で特徴的な点を挙げておく。
テキストまたはHTMLの書式のものを受信するに際して、執筆者に対して必要最小限の規約(約束ごと)が要求される。このあとのプロセスで自動処理を円滑に進めるためのもので、テキスト文書であれば、論文のタイトルや著者名と本文との間に指定されたタグ(
)を挿入する、HTML文書であれば、いくつかの指定された記述様式を守る、等である。目次の編集においては、目次の順序の入換えは本文における章の順序にも自動的に反映される。
索引作成は、索引語キーワード入力、索引語リストのソート、キーワードの統合・修正、本文へのリンク付け、の順に行われる。索引語と本文とのリンク付けを最後に回した理由として、一旦リンク付けを行った後で、本文から不要なリンクを削除する作業が大変煩雑であることが指摘された。
このとき、ページ間のリンク付けや複数のURLを管理するためのタグ付けを施したり、バックアップファイルを作成したりする。
CD−ROMの場合、容量の許容する範囲で、複数の本、雑誌を焼き付けることができる。
版下の作成については目下検討中である。ブラウザで閲覧することを目的として作成されたディジタル文書を版下に変換するに際しては、現在の技術では図表のレイアウト等に大変な手間と経費がかかるため、費用対効果の点から現時点でのこの機能の追加には慎重である。
ひとつのシステムの耐用年数は年々短縮しており、このシステムも3年を目処として開発の費用対効果を考えた。
<質疑>
1)索引語の用語統一について、執筆者側からのクレームはないかとの質問があり、少なくともひとつの論文、ひとつの図書内においては統一が必要であると考えるが、統一が好ましくないと判断される場合には、両方を採用することは技術的には可能である、と回答があった。
2)紀要論文の査読はどの段階でなされるのか、との質問に対しては、このシステムはあくまでも出版システムであり、処理を明快なものにする意味でも、文書が送付される段階ではすでに査読が完了しているものと考えたとの説明がなされた。
3)もとの文書をTeXで作成しておけば版下作成が簡単にできるのでは、という意見については、このシステムが人文系の研究者にとっても扱いやすいものであること、編集プロセスもプロでない人が扱えることを前提としていることから、TeX作成は現実的でないことが指摘された。
(文責:村上泰子)