テーマ:「大学図書館と電子図書館構想」
発表者:北克一(大阪市立大学)
日時:1998年4月4日(土)15:00~17:00
会場:大阪市立大学学術情報総合センター
<はじめに>
今回は、奈良先端科学技術大学院大学、筑波大学、京都大学をはじめとしたいくつかの国立大学図書館で立ち上げられている電子図書館システムの比較検討が行われた。
<国立大学図書館協議会次期電算化システム専門委員会報告>
第1次、第2次、第3次の報告が出されているが、電子図書館と関わりを持つのは第2次報告以後である。特に第3次報告においては「大学図書館の電子図書館化」ということが明確に打ち出され、その立脚点の中に、教育支援機能の強化という視点が加えられている。
<電子図書館システム>
次に、各大学の電子図書館システムの特色について報告された。
独立大学院で小規模であること、理系最先端分野でジャーナル中心の利用であること、過去の資産がないことなど、によって開始された。紙媒体資料のデジタル化が主眼である。著作権等の問題を抱えているため、学外に公開されている情報は少ない。研究のためのテストベッドという性格が強いようである。
著作権を強く意識し、学内において何を電子化すべきかが詳細に検討され、全学委員会および学部委員会が組織された点が特徴である。結果として全学をうまく巻き込む仕組みが作られた。
「Ariadne」を母体としており、データベース構造やユーザ・インタフェースを意識した、電子読書機能重視のシステムとなっている。
OPACデータベースと電子図書館データベースのリンクなどが考えられているが、実用レベルでZ39.50をはじめてサポートした点が最大の特色である。
九州地区コンソーシアムを立ち上げて、電子ジャーナルの共同利用を目指すためのシステムである。コンソーシアム立ち上げの行方が大変興味深い。
ドキュメント・デリバリーを最も重視し、現在利用可能ないくつかのシステムを並行して導入することにより、実際に利用者に提供していく中で見直しを行っていく、という堅実なシステムになっている。
<まとめ>
最後に、大学図書館の最も重要な役割は教育・研究のサポートであり、電子図書館化が進んでもその役割は変わらないこと、その意味で教育・研究との連携を持ったシステムでなければならないこと、また他の図書館サブシステムとの連携が必要であること、電子図書館が情報の生産にも関与するのであれば全学の取り組みとしなければ困難であること、などが指摘された。
<質疑>
コンソーシアムの経理上の問題について意見交換が行われ、日本においては別途予算が組まれない限り困難であろう、との認識を得た。このほか電子図書館システムを進めていく上でのポリシーについて討議された。
(文責:村上泰子)