「マルチメディアと図書館」研究グループ

第24回研究例会報告


テーマ:「電子ジャーナルと電子投稿の現在」

発表者:北克一(大阪市立大学)

日時:1998年6月27日(土)15:00〜17:00

会場:大阪市立大学学術情報総合センター


<はじめに>

今回は、現在対応を迫られている電子ジャーナルと、その背後にある仕組みとしての電子投稿の実態について、様々な観点からの検討がなされた。

<電子ジャーナルの諸相>

はじめに、電子ジャーナルの現状について、作成者の意向、構築の技術的プロセス、提供プロセス、企画プロセス、ユーザ・インターフェイスの観点から、それぞれ現状とその問題点について報告された。

<エルゼビアの挑戦>

エルゼビア社が参加したTULIPプロジェクトのレポートから、その中で提供者側とユーザ側とが電子ジャーナルに望む事項は、互いに対立する関係にあることが示された。

<その他>

電子ジャーナルのリストとして、http://www.usaco.co.jpが紹介された。

使う側から、電子ジャーナル購入の条件を提示した例として、カリフォルニア大学の事例が紹介された。

電子投稿を受け付けている査読付き学会論文誌/国際会議の投稿/印刷手続きが例示された。興味深い特徴として「紙原稿を添付することが義務づけられている」点が取り上げられ、その要因に言及された。

<今後>

今後は次第にエルゼビアのように先端科学分野を中心とした取組みと、OCLCのように総合的な取組みとに分化してゆき、学協会での維持管理は次第に困難となり淘汰されてゆくであろう、というビジョンが示された。

<質疑>

1)紀要やジャーナルの電子出版システムの現状について質問が出された。これに対しては、一旦紙で出力したあと、それを電子化するというアプローチと、はじめから電子化するアプローチとがあり、後者については、出力スタイル、編集校正作業、権威づけ、等の問題があって遅々とした歩みであるとの回答がなされた。

2)電子ジャーナルが時として紙のジャーナルよりも発行が遅くなる原因についての意見が交換された。

3)その他、今後電子ジャーナル購入へ移行する場合に注意すべき点として、所有権の問題、電子媒体の不安定性の問題、ILLの問題などが取り上げられた。

(文責:村上泰子)