「マルチメディアと図書館」研究グループ

第40回研究例会報告


テーマ:「英国図書館の戦略的運営方針」

発表者:呑海沙織(京都大学附属図書館)

日時:2000年1月29日(土)15:00〜17:00

会場:大阪市立大学学術情報総合センター


<はじめに>

今回は英国図書館を実際に訪問された呑海氏から、英国図書館の機能的業務分担とロケーションへの反映、運営方針について、写真も交えて報告された。

<英国図書館の概要>

英国図書館は英国の国立図書館であり、代表的納本図書館であること、ロンドン・サイトとボストン・スパ・サイトとで一機能二館運営方式をとっていること、蔵書は図書が1600万冊で、蔵書規模はLC、北京についで第3位であること、文献複写・貸出し申込数は400万件で、日本大学図書館全体で110万件であるのと比較しても、約4倍の多さであること、などについて具体的に報告された。

一機能二館運営方式については、セント・パンクラス駅すぐでBMからも近い立地を生かしてダイレクト・サービスを担当するロンドン・サイトと、交通の便は悪いが土地・人件費が安く、全国どこにでも24時間以内に届けられる国土の中央に位置することにより、リモート・サービスを担当するボストン・スパ・サイト、というそれぞれの対照的な特徴が示された。

<DDS>

次にボストン・スパ・サイトに配置されているBLDSCの文献供給サービス(DDS)の現状について報告された。BLDSCの特徴は「資料のより早い提供」と「マーケティングの徹底」で、日に16000件のリクエストをこなしている。対象は国内のみならず国外も140か国からの利用がある。BLDSCが提供するサービスには、以下の4つがある。

  1. 図書館特別文献複写サービス
  2. 著作権料支払文献複写サービス
  3. FAX受取文献複写サービス
  4. 特急サービス

BLDSCにはマーケティングのセクションがあり、国内では1995年から、国外では1998年からモニタリングを実施している。1998年の結果から、「デリバリの早さ、正確さへの要求が高いこと」、「電子的ドキュメント・デリバリへの要求は低いこと」などが指摘された。

<質疑>

参加者からは、1998年のモニタリング結果で電子的ドキュメント・デリバリ」への要求が低かったことへの関心が高く、その理由についていくつかの意見が提示された。報告者からはその後UnCoverとの比較結果についての言及もあり、BLDSCの問題点として、個人で利用しにくいこと、クレジット・カードでの支払ができないこと、等が挙げられた。

(文責:村上泰子)