「マルチメディアと図書館」研究グループ

第56回研究例会報告


テーマ:「我が国大学図書館と電子ジャーナル・コンソーシアム契約の現状」

発表者:平元健史(千葉大学附属図書館)

日時:2001年10月13日(土)14:30〜17:00

会場:京都大学総合人間科学部図書室


<はじめに>

今回は、我が国における複数大学図書館が自主的に形成した最初の電子ジャーナル・コンソーシアムであるJIOC/NUの形成に中心的役割を果たされ、現在も出版社との交渉に尽力しておられる千葉大学附属図書館の平元健史氏を招き、千葉大学の事例を中心にコンソーシアムの現状と課題についてお話いただいた。

<コンソーシアム形成の背景>

日本国内図書館の外国雑誌受入タイトル数が1990年代に入り年々減少している現状から、国際化が叫ばれている今日の学術研究を十分にサポートできないという危惧がある。大学財政の悪化下、ひとつの重点分野として電子ジャーナルの導入を位置付ける必要がある。一方、学術雑誌における出版と編集の分離は出版の過度の商業主義を生み、寡占化とあいまって価格の高騰を引き起こしている。

<コンソーシアム形成時の課題>

コンソーシアム立ち上げ前に検討された主な課題は次の3点。

<JIOC/NU>

国立大学図書館協議会は平成11年5月、図書館電子化システム特別委員会関東・東京地区ワーキング・グループを発足させ、11月関東地区国立大学部課長会議でIDEAL・オープン・コンソーシアム形成を千葉大学が発議、文部省との協議の末、翌3月JIOC/NU(Japan IDAL Open Consortium/National University)が発足した。平成13年度までに17大学等が参加、平成14年度からはさらに11大学等がすでに参加を表明している。

JIOC/NUの形成により得られた効果として、大学間のディジタル・デバイドの解消、我が国大学図書館における電子ジャーナル導入の呼び水効果をはじめ、いくつかの点でこれまで懸案であった様々な課題に展望が開けたこと、一方で今後の課題についても示された。

また上記アカデミック・プレス社のほか、エルゼビア・サイエンス社、シュプリンガー社、ブラックウェル社、ジョン・ワイリー社とも交渉を行っているとのことである。

<さいごに>

今後の方向性として、コンソーシアム空白地帯の解消や利用統計の入手可能性といった課題のほか、ナショナル・サイト・ライセンスの検討、出版社に依存しない電子ジャーナルの構築など、さらにダイナミックな改革の必要性にも触れられた。

フロアからは、冊子体を基準としてそのプラスアルファとしての電子ジャーナルという時代から、電子ジャーナルが基本であって冊子体がオプションという時代に変化してきている、という指摘があり、その後ナショナル・サイト・ライセンスの実現可能性についての議論も交わされた。最後に、図書館員が研究者の信頼を獲得するためには、現状の枠組みの中で考えるのではなく、現状を打開する方法を考えよということばで締めくくられた。

(文責:村上泰子)