Works/Masters/247127 の履歴(No.1)


睡眠時無呼吸検出のための時系列特徴分析と対照学習

劉 景南

本研究では,胸部と腹部の呼吸運動信号の時系列(呼吸曲線)を入力とする睡眠時無呼吸検出問題を題材として,時系列特徴の分析と対照学習に基づく深層学習モデルの設計について調査した.取り組みは大きく二つに分かれる.まず,畳み込み残差ネットワークで呼吸異常検出モデルを構築して教師あり学習のベースラインとし,時間領域特徴に加えて周波数領域特徴を用いる統合モデルを設計した.第3章では,高速フーリエ変換とウェーブレット変換3種を代替案として周波数解析手法を比較した上で,時間領域特徴と周波数領域特徴を融合するモデル構成により異常検出性能が向上することを確認するとともに,周波数領域の情報が誤分類の抑制に一定の効果をもつことをアブレーション実験により示した.呼吸異常の主要な情報は ResNet で特徴抽出できる呼吸曲線波形の局所的なパターン構造の変化にあるが,周波数成分の変化はその特徴では不足している情報を補い,判別能力の向上に寄与することが明らかになった.次に,データ拡張と教師あり対照学習を組み合わせた呼吸異常検出モデルの学習方略を設計した.対照学習により,同一のラベルが付与された呼吸運動クラス内で波形どうしの変動が大きい呼吸曲線に対して,クラス内凝集性とクラス間分離性を同時に達成できるように表現空間を整形する.対照学習へのデータ拡張の導入は,正例(異常睡眠エポック)と負例(正常睡眠エポック)のサンプル数に大きな偏りが存在するクラス不均衡データからの学習において,モデルの過学習を抑制しながら汎化性能を向上させるための工夫である.本研究では,時系列に含まれる意味的情報を保ったまま多様なビュー(=表現)を生成するために,オートエンコーダまたは変分オートエンコーダによるデータ拡張を組み込んだ.第4章の実験調査からは,提案手法により不均衡データの影響を緩和できることと,変分オートエンコーダによるデータ拡張と対照学習の組合せにおいてベースラインモデルを上回る異常検出性能が確認された.ただし,時間領域特徴と周波数領域特徴を融合する呼吸異常検出モデルと比べると性能改善は限定的であったため,t-SNE および UMAP を用いた特徴空間の可視化を通じてその要因の考察を行うとともに,第5章でさらなる機能拡張の可能性について検討した.