第1章 地方財政の機能

1.1 財政の役割

<財政とは>
  政府の経済活動を財政と呼ぶ
  歳入  租税・公債
  歳出  公共財・サービスの提供
財政の3大機能
(1)資源配分  (2)所得再分配  (3)経済安定

<資源配分機能-公共財の提供>

P3 図1−2 公共財と民間財

 排除原則    可 民間財    不可 公共財

消費の非競合性(等量消費)  競合 民間財   非競合  公共財

<所得再分配機能>
 市場経済→格差拡大→社会の不安定化→格差の是正が必要

 憲法25条「全ての国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」
 2004年度 全国の保護世帯は約100万世帯(約140万人)
 累進所得税:所得不平等の是正
 相続税:資産保有の不平等の是正
 社会保障給付:児童手当、生活保護
 社会保険制度:年金制度による世代間の再分配

<経済安定>
 裁量的財政政策  ケインズの有効需要
 景気の自動安定効果(ビルトインスタビライザー) 所得税、法人税

1.2 財政システムと財政の規模

<民間経済との関わり>

図1−1 公共部門と民間部門の関わり


家計、企業、政府の関係

<公的供給と公的生産>
公共財=公的供給とは限らない


公的生産・公的供給  警察官・消防士

民間生産・公的供給  給食の民間委託、道路建設の民間への発注



<政府の範囲>
図1−2 SNAにおける政府部門の範囲
  一般政府、中央政府、地方政府、社会保障基金


地方政府の普通会計:各地方団体の一般会計は団体ごとに別の基準で作られているため、財政統計上は統一した尺度で作り直した「普通会計」が使用される。


<地方制度>
 連邦(Federal)国家 アメリカ、カナダ、ドイツ、スイスなど:州が集まって1つの国家を形成
 単一(Unitary)国家 日本のほかイギリス、フランス、スウェーデン:行政区域としての地方公共団体(日本では都道府県と市町村)を設置


<予算と決算>
 予算      会計年度ごとの1年間の歳出と歳入に関する収支計画
 暫定予算   会計年度の開始時点(4月1日)で予算が成立していないケース
 補正予算   経済状況の変動に対応
 決算      会計年度終了後に確定した歳入・歳出の額を事後的に示したもの

<大きな政府と小さな政府>

小さな政府  アダム・スミスは政府の役割を外交、国防、治安、司法に限定

アメリカ  小さな政府    ヨーロッパ 大きな政府

民主党  大きな政府  


1.3 地方財政の役割

<公共財の供給>
 地方財政 地域ごとに設けられた行政体の財政の総称
 地方財政の役割は、地理的に限定された公共財の提供
 
 
<所得再配分と地域福祉>
 所得再分配 国レベルで実施するのが適当
         給付窓口は地方

 “地域福祉” 所得再分配というよりも地域公共財と位置づける方が適切

<経済安定における地域の役割>
 経済安定機能 立案と実施は国が中心

<地方公共財の供給が地方財政の中心的役割>
    ゴミ収集、消防など 地域福祉(国の関与も必要?:例 生活保護) 


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