第8章 国庫支出金 

8.1 国庫支出金とは

<補助金の分類>

 国庫支出金  中央政府(国)から地方政府(地方団体)への移転支出

 

図8-1 補助金の分類

一般補助金
特定補助金
定率補助金
定額補助金

<国から地方への補助金>

国の予算からの補助金の定義
@補助金 特定の事務又は事業に対する特定補助金
A負担金 地方財政法上の国庫負担金に該当
B交付金
 特定の目的で地方公共団体、民間非営利団体、家計に対して支出される補助金
C補給金 民間非営利団体、地方公共団体、政府関係機関の収支を補填ないし利子差額を補填
D委託費 各種の委託研究の対価

地方財政法での分類
      ↓

図8-2 国庫支出金の種類


 

@ 国庫負担金
 
  普通国庫負担金
  建設事業費国庫負担金
 災害国庫負担金
 
A 国庫委託金
 
B 国庫補助金
 

国庫負担金の分類

@「普通国庫負担金」
A「建設事業費国庫負担金」
B「災害国庫負担金」

国庫委託金  地方団体は支弁(肩代わり)はするが負担する義務は負わないもの→国会議員の選挙や国勢調査など

国庫補助金  奨励的・財政援助的な補助金
 

<法律補助と予算補助>

 交付根拠による区分
 「法律補助」  法制上「負担する」とされている義務的な支出
 「予算補助」  奨励的な補助金が多く、おおむね国庫補助金に対応したもの

<国庫支出金の経路>

  直接補助    補助事業の実施主体が都道府県ないし市町村の場合に、資金が実施主体である都道府県や市町村に直接交付されるもの
  間接補助    補助事業の実施主体が市町村の場合に、市町村に交付される資金が都道府県を経由するもの

8.2 補助金の経済効果

<定率補助金と一般補助金>

図8-3 一般補助金と定率補助金

 

<定額補助金と一般補助金>

図8-4 定額補助金と一般補助金

 

8.1 国庫支出金の現状と課題
<国庫支出金の現状>

H26年度決算 
国庫支出金決算額 15兆5,189億円 前年度6.0%減
歳入総額に占める割合 15.2%

国庫支出金内訳
生活保護費負担金            2兆7,907億円(国庫支出金総額の18.0%)
社会資本整備総合交付金        1兆7,683億円(同11.4%)
普通建設事業費支出金         1兆6,403億円(同10.6%)
義務教育費負担金            1兆5,082億円(同9.7%)
子どものための金銭の給付交付金 1兆4,132億円(同9.1%)

 団体種類別
    都道府県
       義務教育費負担金1兆5,082億円(国庫支出金総額の23.5%)
       普通建設事業費支出金1兆323億円(同16.1%)

    市町村
         生活保護費負担金2兆6,485億円(国庫支出金総額の29.1%)
         子どものための金銭の給付交付金1兆4,132億円(同15.5%)
         障害者自立支援給付費等負担金9,830億円(同10.8%)


 

<財政再建と補助金等の整理・合理化> 


p171
図8-5 地方団体に対する補助金の整理・合理化の推移


 2002年〜2006年 小泉政権下で件数の削減と金額の減少 三位一体の改革

表8-3 主な補助率の変遷
1984 1985 1986 1987,88 1989,90 1991,92 1993
生活保護費負担金
児童保護費等負担金
街路事業費補助
一般国道改修費補助
8/10
8/10
2/3
2/3
7/107/106/10
6/10
7/10
1/2
5.5/10
6/10
7/10
1/2
5.25/10
5.5/10
7.5/10
1/2(恒久化)
5.25/10
5.5/10
7.5/10
1/2
5.5/10
6/10
7.5/10
1/2
1/2(恒久化)
2/3(恒久化)
資料)『補助金便覧』(各年度版)。

80年代から90年代までの補助金削減は、補助率の引き下げによるものが大きい


<三位一体の改革>
 税源移譲  3兆90億円規模:2006年度税制改正で所得税から個人住民税への恒久措置とする。
                    2006年度予算では全額を所得譲与税で措置

 補助金削減
  児童扶養手当の国庫負担割合  4分の3→3分の1
  児童手当の国庫負担        3分の2→3分の1
 建設国債を財源とする施設整備費削減
   (1)総務省の消防防災施設
   (2)文部科学省の公立学校等施設
   (3)厚生労働省の地域介護・福祉空間整備等施設
   (4)経済産業省の資源循環型地域振興施設
 などは、廃止・減額分の5割を税源移譲。

義務教育費国庫負担金  小中学校を通じて国庫負担割合を3分の1とし、8500億円程度減額


<ひも付き補助金の一括交付金化>

民主党政権下  
2011年度  地域自主戦略交付金   4799億円  →特定補助金を一括交付金化

2013年度  地域自主戦略交付金廃止  省庁ごとの交付金等へ

 
<補助金の一般財源化>
 特定補助金の問題点
  ・国による奨励的な特定補助金はコスト意識を生じないため浪費される可能性がある。
  ・補助金獲得のための陳情活動の過程で、政治家や中央官庁の役人による不正行為が行われる可能性がある。
  ・補助金が当初の目的にそって支出されているかどうかを国が審査するために、複雑な事務手続きやヒヤリングが必要となり、間接的な事務費が増大する。
  ・一度支出された補助金が既得権化される。


河川改修など便益がスピルオーバーするケースでは特定補助金を活用すべき
 →一般財源化すると上流の地方団体では河川改修がおこなわれないかも

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