第3章 政府支出の経済学

第1節 競争市場の効率性と政府の必要性
(1)競争市場の効率性
厚生経済学の第1基本定理
 ある条件のもとでは競争経済が効用可能性曲線上のあるひとつの点(パレート最適)を実現する

パレート最適→他の誰かの経済状態を悪化させることなしに、ある者の状態をよくするように資源を配分することが不可能な状態。

厚生経済学の第2基本定理 
 効用可能性曲線上のあらゆる点は、ある個人から他の個人を再配分することで達成可能である。

図3-1 効用可能性曲線


(2)交換の効率性


図3-2 


競争市場では、すべての個人が同じ価格で財サービスを入手できる

Aさんの限界代替率=相対価格比=Bさんの限界代替率

    MRS=p/p=MRS

(3)生産の効率性
技術的限界代替率(RTS)=等量曲線の傾き
(Maginal rate of technical substitute)
生産の効率性:yの生産量が所与のときxの生産量を最大化する。
RTS=RTS

 
競争市場では、すべての企業がおなじ価格で生産要素を購入できるので
    
   RTS=w/r=RTS

(4)生産物混合の効率性
りんごとみかんの最適な組み合わせには、技術的に可能な組み合わせと個人の選好の両方を考慮する必要がある。

効率的な生産の組み合わせ:生産可能性曲線
生産可能性曲線の傾き=限界変形率(marginal rate of transformation,MRT)


簡単化のため個人の選好がすべておなじとすると、無差別曲線と生産可能性曲線の接点で最適な組み合わせが得られる。
    MRS=MRT

(5)政府の必要性
公共財
   等量消費  限界費用ゼロ 燈台の費用
   排除原則  燈台の利益を限定できない
公共財は市場では供給できない


外部性
  公害防止装置、大学教育   正の外部性
供給量が不足  補助金交付

市場の不完全性
保険市場
  資本市場  中小企業金融公庫

第2節 公共財の最適供給
(1)社会的厚生の最大化

総厚生=総便益-総費用
  総厚生最大化の必要条件   限界便益=限界費用

(2)公共財の最適供給

ナッシュ均衡→資源配分が無駄なくおこなわれるパレート最適より公共財の供給量が過少

サムエルソン・ルール
政府が資源配分を完全に操作可能
 first best

  MRS1+MRS2=MRT 公共財が存在する場合のパレート効率性の条件

リンダール均衡
 公共財1単位あたりの費用負担割合を政府が提示
  →公共財の租税価格

  各個人は提示された価格のもとでの公共財の需要量を政府に報告
  →当初提示された租税価格のもとで公共財に対する需要と供給が一致しない場合は
   政府は公共財に対してより多く需要を報告した個人の租税価格を引き上げ
   需要の少ない個人の租税価格を引き下げる
            
   リンダール均衡のもとでは公共財の最適生産条件を満たしている。
   
(3)公共財の最適供給と費用負担

図3-10 公共財の最適供給と費用負担

公共財の最適供給 社会的限界便益曲線と社会的限界費用曲線MSCが一致するところ→Q*

一律負担なら→MSC/3


(4)中位投票者の理論
 多数決投票は中位投票者の選好を反映→QB


第3節 公共選択の理論
 図3-11 多数決均衡と投票のパラドックス


多数決均衡が存在するためには、単峰型の選好が条件となる。


【財政学の館】トップページへ 【Web版入門財政】目次へ