本ページは、藤木剛康編『アメリカ政治経済論』ミネルヴァ書房、2012年、のサポートページです。本ページは、①本書の紹介、②各章ごとにゴシック表示をした重要用語の説明、③補章で示したアメリカ研究に役立つウェブサイトへのリンク集、から構成されています。読者の皆様の学習の助けとなれば幸いです。

- 【 概要 】
- 2009年1月、10年近くにも及ぶアフガニスタンとイラクでの戦争、そして、住宅バブル崩壊に端を発する世界金融危機という困難の中、オバマ政権が成立した。しかし、就任当初における国内外での熱狂的なブームは、1年ももたなかった。2011年末の現在、アフガニスタンやイラクからの撤兵は進められつつあるが、アメリカ経済は低迷し、景気対策をめぐってオバマ政権は有効な手だてを打ち出せず、アメリカ国民からの支持率も低下している。オバマ大統領は、2012年の大統領選での再選をめざしているが、共和党の候補者選びの混迷にもかかわらず、厳しい選挙戦を強いられることになるだろう。では、オバマ政権が直面しているアメリカ政治経済の苦境の背景には、どのような要因があるのだろうか。
- 本書は、冷戦後の経済の復活と国際政治での「唯一の超大国化」という歴史的な展開を踏まえて、現在の金融危機と国際秩序の多極化、オバマ政権の登場とその後の経過について概説するアメリカ政治経済に関する教科書である。現代世界の政治経済秩序において、アメリカは中心的な地位を占めているとともに、アメリカの政治・経済・外交は日本をはじめとした世界各国に多大な影響を及ぼしている。確かに、世界金融危機の後、中国を始めとする新興国の台頭に伴う多極化が進んでいるように見えるが、これまでアメリカが果たしてきた役割を単独で担える国は、当面の間、現れないだろう。したがって、われわれ日本人がその中に置かれている国際環境を理解するうえで、現代アメリカの政治経済に関する知識は必要不可欠である。また、アメリカ社会には、困難に対して柔軟に立ち向かい、様々な新しいイノベーションを生み出すダイナミズムが存在している。これらのイノベーションやイノベーションを生み出す土壌としても、現代のアメリカ政治経済を学ぶ意義は大きい。
- 本書では、これらアメリカ政治経済をめぐる論点を、世界金融危機(第Ⅰ部)、国内経済(第Ⅱ部)、国内政治(第Ⅲ部)、国際関係(第Ⅳ部)、に分けて構成した。本書を最初から順に読み進めていただければ、①世界金融危機の発生と波及、②過去30年程度のアメリカ国内経済の変化、③オバマ政権成立の背景と国内政治の重要課題、④冷戦後アメリカの対外政策、という流れで現代アメリカの政治経済に関する体系的な知識を獲得できる。今日、アメリカの政治経済に関する情報は、テレビのニュースや新聞・雑誌にあふれかえっているが、通読後は、それらのニュースの背景にある歴史やアメリカ特有の事情を踏まえた深い理解ができるようになるだろう。
- 【 目次 】
- 第Ⅰ部 世界金融危機
- 第1章 国内経済情勢――住宅バブルはなぜ生じたのか
- 第2章 対外経済関係――世界金融危機はどのように広まったのか
- 第Ⅱ部 国内経済
- 第3章 産業構造の変化――サービス経済化とイノベーションシステムへの道
- 第4章 雇用構造の変化――所得格差はどのように拡大したのか
- 第Ⅲ部 国内政治
- 第5章 政治システム――オバマ政権はどのように成立したのか
- 第6章 財政政策――巨額の財政赤字をどうするのか
- 第7章 社会政策――医療保険改革はなぜ困難なのか
- 第8章 エネルギー政策――気候変動対策とエネルギー安全保障をめぐって
- 第9章 金融政策――なぜ金融危機を防げなかったのか
- 第Ⅳ部 国際関係
- 第10章 ポスト冷戦期の外交・安全保障政策――新たな外交政策理念の模索
- 第11章 オバマ政権の外交政策――国際秩序の多極化とマルチパートナー外交
- 第12章 変化する米中関係――アメリカの対中・対アジア太平洋政策
- 第13章 対外金融政策――世界金融危機にどのように対応したのか
- 補 章 アメリカ政治・経済研究をテーマとしたレポート・卒業論文作成