GRS (1989)検定は,The Gibbons Ross and Shanken (1989) testの略で,Originalの論文は以下のものです.
Gibbons, M., S. Ross, and J. Shanken. (1989). "A Test of the Efficiency of a Given Portfolio." Econometrica 57 (5):1121-1152.
Excelで行えるGRS(1989)検定(44.0KB)
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GRS検定は,CAPM(マーケット・モデル)やFama-French
3ファクターモデルの切片αの有意性検定である.例えば,FF3は,
の式で推定を行う.その際,iは,資本コスト算定などの場合には個別企業iを指すが,GRS検定ではポートフォリオiを意味する.
ポートフォリオが1個の場合のGRS検定は,(1)のαiの有意性検定となるので,通常のt検定と実質上等しくなる.ところが,複数のポートフォリオで(1)を推定した場合には,切片αが複数個得られることになるので通常のt検定は用いられない.例えば,3個のポートフォリオで(1)を推定するとする.
ポートフォリオ1の推定:
ポートフォリオ2の推定:
ポートフォリオ3の推定:
このとき注意しなければいけないのが,説明変数MPt,SMBt,HMLtは全ての式において共通であるということである.
上記3式からは,3個の切片,α1,α2,α3が得られる(推定量を表すハット等の記号は省略).GRS検定は,
のF検定のことである.
具体的には,GRS検定の検定統計量はF分布で,以下のように求められる.
T:モデル推定の観測値数で,5年月次の60個が一般的である(Excelでは省スペース化のために15個で推定している),
K:切片を除く説明変数の数なので,FF3ならMPt,SMBt,HMLtの3個,
N:ポートフォリオ数(αの個数),
E[f]:K個の説明変数の平均値のベクトル,
Ω:K個の説明変数の共分散行列,
Σ:N個の誤差項の共分散行列.
なお,ポートフォリオが一つの場合(N = 1)には,は,切片のt値の絶対値と一致する(∵ xが自由度nのt分布に従うとき,x2は自由度(1, n)のF分布に従う).