本研究プロジェクトの各メンバーのこれまでの研究成果を、企画中の架空の書籍『中国語教育の基盤の再設計』の各章にあてはめるという形で紹介し、来会者とシマ・トークという形式で意見交換をし、討論をします。
申し込み等は不要ですが、事前にご連絡いただければ、いろいろ詳細な案内をさせていただくことも可能です。連絡は、上記の「問い合わせ先」まで。
第1章 目標のない授業はありえない〜バックワード・デザイン
1.1 ゴールを先に決めるという設計
1.2 ゴールを決めたら評価方法を決める
1.3 大きな目標から小さな目標へ
目標分解と学習要素設定のシステム—遠隔ゴールから直近ゴールへ(山崎)
(山崎直樹/関西大学)(紹介する過去の成果: コミュニケーションゴールの違いが学習項目の重みづけを変える→詳細)
次の手順により学習項目を設定するシステムを紹介する。
- 「コミュニカティブなゴール(※)」を設定する。※最終的な到達目標=最終的な評価の対象となる成果物/パフォーマンス
- そのゴールに到達したことを示す「証拠」を手に入れるテストを考える。
- そのテストに合格するためには(そして良い成績をとるためには)学習が何を知っていてどんなことができればよいかをリストにする。
- そのリストの項目を1つずつ消化するためにはどのようなゴール(より小さなゴール)を設定すればよいかを考える。
- [2]に戻って、同じ作業を繰り返す。それ以上、小さなゴールに分解できなくなったら、そこで学習要素設定は終了する。
第2章 学習項目は自分で考えて選べ〜バックヤード・デザイン
2.1 課題解決に必要な文法的知識を考える
2.2 課題解決に必要な談話構成的知識を考える
第3章 あなたは何も知らない〜中国語は奥が深い
3.1 あなたはミソもクソもいっしょにしている〜これまでの「文法」では不十分
3.2 その言いかた,失礼では?〜語用論的視点・社会言語学的視点
呼称から見た中国語コミュニケーション・ルール ―「上下」「親疎」のものさしをいかに使うか
(西香織/北九州市立大学)外国語によるコミュニケーション能力を高めるには,その言語の文法知識等のほか語用論的知識も必要である。しかし教科書に語用論的な記載がないことが少なくない。たとえば二人称代名詞“您”は辞書や教科書には「“你”の敬称」「あなたさま」などと書かれているが,果たしてこの説明で学習者が“您”を適切に使えるだろうか。また,“小张”,“小李”等の“小―”には「姓などの前につけて親しみを表す接頭辞」「~さん」「~ちゃん」などと書かれているが,“小―”=「~さん」と理解して日本語で「~さん」と言うべきところを中国語ですべて“小―”と置き換えた学習者,年上の「~さん」を“老―”,同世代,年下に対する「~さん」を“小―”と覚えていた学習者もいたが,これらは本当に学習者の誤りだろうか。教師,教科書のせいではないか。
今回は,呼称を中心に日中の大まかな「上下」「親疎」の物差しの違いについて考察したい。
第4章 インプットのためのくふう
4.1 学習者はアホじゃない〜自分で知識を獲得するためのscaffolding
4.2 Focus on Form
4.3 Input Processing
第5章 アウトプットのくふうとその評価
5.1 タスクベースで考える
5.2 アウトカムベースで考える
5.3 ルーブリックによるパフォーマンス評価
ルーブリックによるパフォーマンス評価
(植村麻紀子/神田外語大学)(紹介する過去の成果:「プロジェクト型学習活動のすすめ―キャンパスビデオ/冊子を作って交換留学先に送ろう」→詳細)
昨年発表した「プロジェクト型学習活動のすすめ―キャンパス紹介ビデオ/冊子を作って交換留学先に送ろう」では、プロジェクトの進め方、評価方法、学生のふりかえりを紹介した。今回のワークショップでは、評価方法として採用したルーブリックに焦点をあて、以下の四点について議論したい。
- ルーブリックの作り方▶項目の立て方や加重化によって評価が異なる。すなわち、ルーブリックは教師が重視したい点を反映するものである。
- ルーブリックの使い方▶活動開始時に提示することで、学生たちが作品を作るとき、およびプレゼンテーションの方法をどのように工夫したか。また、教師はグループで1つの評価点を各個人にどう振り分け、成績評価に算入したかを紹介する。
- ルーブリックの汎用性▶同じルーブリックを別の活動にも使えるようにするには(教師の仕事を減らすためにも)、どのような項目をたてておくとよいか。使いやすいルーブリック(項目の立て方、レベル分け、記述文)について考えたい。
- ルーブリックの波及効果▶②とも関連するが、様々な授業の成績評価にルーブリックを用い、それを初めに提示することで、学生に「何を」「どのように」学ぶべきかを示すものとなるのではないか。(「文学講読」、「翻訳法」、「教科教育法」といった授業の成績評価にも導入することを考えている)
第6章 課題解決に必要な能力は言語能力だけではない
6.1 「文化」を使いこなす
テキスト・授業の中にいかに文化理解を盛り込むか
(中西千香/愛知県立大学)本報告では、中国語教育の中でどのように文化理解を取り入れていけばよいかを考える。現在の教育現場では、文法・会話・語彙習得が中心になっているが、さらに文化的情報をそこに盛り込むことで、学習者により円滑なコミュニケーション能力を習得させることができる。
これまでの外国語教育における文化理解は、原文の作品を読むことや映画をみること、他の関連科目にその多くを任せてきた。しかし、どんな形で学ぼうと、そこに「気づき」がなければ、意味をなさない。
今回は文化の中でも、言語を話す国、人々の生活様式(culture with a small c〔小文字のc文化〕)にポイントを置き、語学教育の中で可能な文化理解のアプローチの方法、現在出版されているテキストに文化理解がどのようになされているか、今後語学の授業の中で文化理解を盛り込むにはどのような方法があるか議論し、提案したい。
6.2 協働、高度思考、他との連携
6.3 学習リソースにアクセスできる学習者を育てるために
(終わり)