アメリカ政治経済研究会
本研究会の成果として、河音琢郎・藤木剛康編『G・W・ブッシュ政権の経済政策―アメリカ保守主義の理念と現実』ミネルヴァ書房、2008年を刊行しました。

- 【 概要 】
- 2008年大統領選が本格化している現在、ブッシュ政権は完全に国民の支持を失い、政治的死に体(レイムダック)と化している。9.11同時多発テロをきっかけとするアフガニスタンやイラクへの攻撃、オーナーシップ社会構想など、ブッシュ政権の強行した野心的な政策のほとんどは失敗と見なされ、過去のものとして忘れ去られようとしている。しかし、ブッシュ政権が残した巨大な遺産は今後もアメリカの政治経済を大きく左右し続けるだろう。
- 本書は、ブッシュ政権の経済政策を包括的に明らかにしようとする試みである。これまでブッシュ政権による統治の実像は、その政治理念や政権運営を対象に是か非かという形でのみ語られがちであった。しかし、本書では、壮大な政治理念や強引な政治手法、そしてその帰結だけでなく、代表的な分野ごとの実際の政策形成過程にも焦点を置き、緻密な視点からブッシュ政権の経済政策の歴史的意義を明らかにし、来たる新政権での政策転換の可能性を検証する。
- 【 目次 】
- 序章 現代アメリカ経済政策を分析する視角(河音 琢郎)
- 第1部 国内経済政策
- 第1章 租税・財政政策――財政赤字への再転落の含意(河音 琢郎)
- 第2章 産業政策――地域産業政策からの把握(山縣 宏之)
- 第3章 社会政策――オーナーシップの理念と現実(吉田 健三)
- 第2部 対外経済政策
- 第4章 対外金融政策――資本流入の持続可能性(菅原 歩)
- 第5章 通商政策――貿易促進権限と自由貿易協定(藤木 剛康)
- 第6章 援助政策――「自由と民主主義の拡大」と安全保障(河﨑 信樹)
- 終章 G・W・ブッシュ政権の経済政策と新政権への展望(藤木 剛康)
本書に対する書評として、以下のものが発表されております。ありがとうございます。
- 坂井昭夫『経済』2009年3月号
- 谷 達彦、西谷 直樹、星野 智樹他、山下かおり、李存庫『立教経済学論叢』73号、2009年9月
- 塙 武郎『社會科學研究』61巻5・6号、2010年
- 櫻井 潤『財政と公共政策』32巻1号、2010年6月
本研究会の成果として、河音琢郎・藤木剛康編『オバマ政権の経済政策―リベラリズムとアメリカ再生のゆくえ』ミネルヴァ書房、2016年を刊行しました。

- 【 概要(まえがきより抜粋) 】
- バラク・オバマは、「変革(change)」と「アメリカの宥和」を掲げて2008年の大統領選挙に勝利し、若干47歳(当時)にして第44代アメリカ合衆国大統領に就任した。初の黒人大統領の誕生、深刻な経済危機からの脱出への願い、泥沼化したイラク・アフガニスタン戦争への厭戦気分などがない交ぜになって、「Change」という彼のスローガンに共鳴した100万人以上の人々がワシントンでの就任式に駆けつけた。国民の高い期待を背景に、オバマ政権は発足直後から、景気対策、医療保険改革、金融制度改革、2つの対テロ戦争からの撤退など、大規模な政策を遂行していった。しかし、オバマ政権に対する国民の高い期待と人気は長くは続かなかった。就任当初70%近かった支持率は半年も経たないうちに低落傾向へと転じた。結果、政権発足2年後の議会中間選挙で民主党は歴史的敗北を喫し、下院多数派の地位を共和党に明け渡した。以降は連邦議会との対立のため、大規模な改革の実行は思うにまかせず、政策形成は滞った。2期目の当選こそ果たしたものの、支持率は40%台の低位安定のまま推移し、オバマ政権はその幕を閉じようとしている。
- 経済危機後のアメリカ経済の回復状況、歴史的偉業とされる医療保険改革の是非、「核なき世界」、「中東の平和」を高らかに掲げる一方で無極化と混迷を深めた世界情勢など、オバマのレガシーにはすべてといってよいほど極端なまでの賛否両論がつきまとう。激しい党派間対立がそのギャップをさらに拡大する。そもそも冒頭に記した支持率からしてオバマの評価は難しい。一方では政権初期段階からの支持率凋落をもってオバマの不人気が唱えられてきたが、他方で政権末期において40%台後半という数字は、それなりによく持ちこたえたとの評価も成り立つ。本書では、このような錯綜したオバマ評価を紐解いて、政権の経済政策とその経済的・政治的インプリケーションを丹念に分析することにより、クリアなオバマ政権像を提示してみたい。
- 【 目次 】
- 序章 オバマ政権期のアメリカ経済と経済政策 河音琢郎
- 第1章 金融危機後の住宅市場とアメリカ経済――住宅バブルは再燃するか 豊福裕二
- 第2章 産業構造と産業政策――グローバル化・産業構造高度化に対する「リベラルの挑戦」 山縣宏之
- 第3章 財政政策――「決められない政治」とその場しのぎの予算編成 河音琢郎
- 第4章 医療保障政策――市場に潜む不安定性と「リヴァイアサン」 櫻井潤
- 第5章 年金政策――公的年金の調整案と貯蓄支援案と貯蓄支援の革新案 吉田健三
- 第6章 移民政策――移民制度改革をめぐる党派対立と大統領令 中島醸
- 第7章 対外経済構造と国際金融政策――基軸通貨としてのドルの安定化 菅原歩・河崎信樹
- 第8章 通商政策――メガFTA政策への転換と貿易自由化合意の解体 藤木剛康
- 第9章 外交・安全保障政策――無極化する世界への先制的対応 藤木剛康
- 終章 オバマ政権の経済政策の評価と新政権の展望 河音琢郎・藤木剛康