疎密度モバイルアドホック網における重み付き平均を用いた時刻同期

飴村 壮史

修士学位論文, 2012

Abstract

複数端末からなるネットワークシステムにおいて端末間の時刻同期は重要な課題である.現在,時刻同期方式として広く普及しているのはNTPであり,各端末は正確な時刻源を持つサーバとネットワークを介して定期的に通信を行うことで,時刻同期を実現する.しかしながら,アドホックネットワークやセンサネットワークのような無線ネットワークでは通信の信頼性が低下するため,NTPによる時刻同期は容易ではない.さらに,近年では,宇宙空間,水中などネットワークインフラが存在せず,また,端末密度が非常に疎な環境下での通信の実現が求められている.こうした疎密度モバイルアドホック網においては,ほぼ常時直接通信可能な端末が存在しないことから,既存の枠組みでの時刻同期が困難となる.特に端末が新たに加わるような状況ではそれによって変化する端末平均時刻とのずれをいかに速く調整できるかが重要となる.疎密度モバイルアドホック網のように端末間での通信機会が限られていて,なおかつ外部ネットワークとの通信ができない環境での時刻同期を目指した方式の一つに我々の研究グループで提案している単純平均法がある.単純平均法とは端末遭遇時に互いの時刻情報を交換し,それぞれの時計をその平均値に調節することでネットワーク内での相対的な時刻同期を実現する方式である.単純平均法では各端末の持つ時刻情報は等価に扱われるが,他端末と比較して遭遇率の高い端末は自身の時刻を修正する機会が多いため,端末平均時刻に近い時刻を持っている可能性が高くなる.そこで単純平均法の平均を取るという単純な仕組みを遭遇率の高い端末を重視した重み付き平均にすることで,時刻同期の速度の改良が期待できる.本研究では最も収束時間を短くする重みを解析を用いて示すとともに,そのときに実現される収束速度と同期の精度について分析をする.そして最適な重みを用いた重み付き平均法を用いることで,単純平均法に比べて収束時間を短くできることを示し,一方で,同期の精度は劣化する場合が存在することとその条件についても示す.

Downloads

    Text Reference

    飴村 壮史, 疎密度モバイルアドホック網における重み付き平均を用いた時刻同期, Ph.D. Dissertation, 大阪大学, 修士学位論文, March 2012.

    BibTex Reference

    @phdthesis{amemura12mthesis,
        author = "飴村, 壮史",
        type = "{修士学位論文}",
        title = "{疎密度モバイルアドホック網における重み付き平均を用いた時刻同期}",
        year = "2012",
        month = "March",
        school = "大阪大学"
    }