大規模災害に対しては,災害発生前後の防災と減災の両面での対策が重要とな る.減災の観点では,スマートフォンなどのモバイル端末を用いた避難誘導方式 やアプリケーションの研究開発が進められている.一方,防災の観点では,地震 等の災害時に沿道建物の倒壊により道路が閉塞する確率(道路閉塞確率)や人の 流動を表現したデータ(人の流れデータ)が一般に公開されている.本論文では, 避難誘導方式・道路閉塞確率・人の流れデータに基づく,平常時・避難時の人の 流れを考慮した道路網のリスク分析手法を提案する.まず,各道路の平常時の利 用頻度(平常時道路需要)を人の流れデータを用いて導出する.次に,平常時道 路需要を避難者の避難開始位置の地理的分布とみなし,避難時の経路選択を考慮 した辺媒介中心性を用いることで,各道路の避難時における利用頻度(避難時道 路需要)を導出する.道路閉塞確率と避難時道路需要を組み合わせることで,避 難時に道路閉塞と遭遇するリスク(閉塞道路遭遇リスク)の高い道路を検出する. 数値実験により,提案手法を用いることで閉塞道路遭遇リスクの高い道路が検出 可能であることを示す.また,平常時の人の流れ,避難行動,災害発生時刻によっ て,検出される道路が空間的に変化することを示す.
藤井 公大, 平常時・避難時における人の流れを考慮した道路網のリスク分析, Ph.D. Dissertation, 奈良先端科学技術大学院大学, 修士学位論文, March 2018.
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