高スループットなマルチキャスト実現のためのオーバレイネットワーク構築手法

金子 元紀

学士学位論文, 2013

Abstract

近年,クラウドコンピューティングを支える技術としてデータセンタの利用が広まっている.特に,ユーザの知覚するサービス品質の向上や大規模障害への耐性向上を目的に,複数拠点上のデータセンタを連携させる動きがある.このような連携においては,システムやデータの更新情報やバックアップのために,複数拠点間で同一のデータをやりとりする必要がある.このような同一データの複数拠点への配信にはオーバレイマルチキャストの利用が期待できる.これまで,オーバレイマルチキャストは主に動画などのストリーミングサービスへの応用が広く検討されてきた.ストリーミングサービスには,不特定多数のユーザ端末が参加し,各ユーザ端末はそれぞれ自由にサービスへ出入りが可能である.そのため,このようなユーザ端末のシステムの出入りに対してマルチキャスト木を再構成,維持することが主な研究目的とされていた.一方,前述のデータセンタ間通信では,データセンタ内の端末は基本的に常時起動されており,またデータセンタ自体がインターネットにおけるコアネットワーク付近に位置しているという特徴がある.このような状況では,IPネットワークのトポロジ情報を積極的に活用した最適設計が比較的容易に行える.既存研究では,オーバレイネットワークが与えられたときに,IPネットワーク上でのオーバレイリンク間の相互干渉を考慮した上で,スループットを最大とするマルチキャスト木(集合)を選択する手法が考えられている.このとき,完全グラフからなるオーバレイネットワークを与えることでマルチキャスト木(集合)の性能を最大化できるが,同時に候補となる木集合のサイズがノード数に対して爆発的に増加することが問題となる.そこで本研究では,マルチキャストの到達性を保証した上で,高スループットが期待できるオーバレイリンクのみからなるオーバレイネットワークを構築するための手法を提案する.シミュレーション評価により,提案手法を用いることで,完全グラフに比べてより少ないオーバレイリンク数で同等のスループットを実現できることを示す.

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    金子 元紀, 高スループットなマルチキャスト実現のためのオーバレイネットワーク構築手法, Ph.D. Dissertation, 大阪大学, 学士学位論文, March 2013.

    BibTex Reference

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