ソフトウェアのセキュリティ対策は年々その重要さを増しているが,OSなど利用者数の多いソフトウェアでは,更新データ配信時のサーバへの負荷の増大が課題となっている. このような問題解決のために,Windows Updateなど一部のシステムでは一般ユーザの端末(ピア)による配信の補助を可能とするP2P型ファイル配信が利用されている. ただし,ピアの協力には自身のアクセス回線の利用を伴うことから,利用中の他のネットワークサービスの品質低下等を避けるために,ピアが協力行動を控える可能性がある. 先行研究では,P2Pファイル配信において,個々のピア間での同量のピース交換を促すTit-for-Tat (TFT)戦略を導入した場合のシステム性能に関する分析が行われている. 本研究では,同一LAN内など,物理網上で近傍のピアへのピース提供はそれ以外のピアへのピース提供に比べてコストが殆どかからない点に着目し,物理網上で近傍に位置するピア間でTFT制約を緩和した場合のシステム性能の改善度合いを分析する. このような状況下での最適な配信問題は,先行研究における知見を基に線形計画問題(ILP)として定式化できる. 小規模なシステム構成における数値実験を通して,近傍のピア間のTFT制約を緩和することで,すべてのピア間にTFT制約を課す場合と比較して平均ダウンロード時間が約18.3%改善することを示す. また,得られたピースフローから最適な配信に必要なサーバの配信戦略を示す.
西 洋平, 笹部 昌弘, 笠原 正治, Tit-for-Tat型P2Pファイル配信におけるピア間の近傍性を考慮したピースの等価交換の緩和に関する検討, 電子情報通信学会技術研究報告(ネットワークシステム研究会), 118(465), pp.231-236, March 2019.
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