P2Pライブストリーミングはツリー型ストリーミングとメッシュ型ストリーミングの2つに分類される．近年，ツリー型ストリーミングとメッシュ型ストリーミングの長所を組み合わせたツリー・メッシュ混合型ストリーミングが提案されている．コンテンツの配信元であるソースは，自身を根とした複数の配信木(ツリー)を構築し，ツリーに沿ってコンテンツを一次配布する(ディフュージョンフェーズ)．その後，コンテンツの二次配布として隣接するピア同士で保有するコンテンツを交換しあう(スウォーミングフェーズ)．この2つのフェーズを繰り返すことでストリーミングサービスが実現される．しかしながら，このコンテンツ配信に用いられるトポロジはランダムメッシュトポロジに基づいており，必ずしもコンテンツ配信の効率性やピアの参加や離脱に対する適応性の観点で最適であるとは限らない．そこで本研究では，ツリー・メッシュ混合型P2Pライブストリーミングにおいてコンテンツの配信効率が高く，かつピアの参加・離脱に対して適応性のあるトポロジの構築手法を提案する．提案手法は追加・回復・整形と呼ぶ3つのプロセスから構成され，個々のピアはオーバレイトポロジ上で近隣のピアとの間で交換される局所的な情報のみを用いて自律分散的にトポロジを構築・維持する．1つ目は追加プロセスであり，新しくサービスに参加するピアをツリー間の規模のばらつき，及びツリーの高さを考慮して適切な位置に配置するためのプロセスである．2つ目は回復プロセスであり，ピアの離脱により論理リンクが切断された場合に，新たな論理リンクを確立するためのプロセスである．3つ目は整形プロセスであり，ピアの参加・離脱が継続的に発生したとしてもツリーの形状が大きく崩れないようにするためのプロセスである．提案手法の有効性はシミュレーションにより評価する．評価はユーザ側の観点からとシステム側の観点からの両面から行う．ユーザ側の観点からは，コンテンツの再生画質，再生の連続性，再生開始までの待ち時間を評価指標として用いる．一方，システム側の観点からは，構築されたトポロジの形状や障害の発生から回復までに要する時間について議論する．評価結果から，提案手法を用いることで，ピアの参加・離脱が継続的に発生する環境下においても，高画質のコンテンツを連続的に再生可能なストリーミングを実現できることを示す．

山本 浩平, ツリー・メッシュ混合型P2Pライブストリーミングにおけるトポロジ構築手法, Ph.D. Dissertation, 大阪大学, 修士学位論文, March 2009.