日々雑記


謹賀新年

2023-1-1

新年あけましておめでとうございます。
本年もどうぞ宜しくお願い申し上げます。

午前中、神社へ初詣。

参拝後、修理が完了した和泉五社総社本殿(国重要文化財)に参詣。
在来彩色の下層から異なる文様の痕跡や古写真による新たな情報の発見など、多くの知見があったとの由。

初詣を済ませた後、自宅でゆっくり過ごす。

top

国立国会図書館デジタルコレクション

2023-1-3

ちょっとした調べ物があって、国立国会図書館デジタルコレクションをみると大変貌。

年末にリニューアルしたようだが「ログインなしで閲覧可能」と「送信サービスで閲覧可能」(大学で使用可)がある。しかも全文検索が可能。

試みに「岐阜大仏」で検索すると、佐藤勇造『地震家屋』(明治25年4月)や片山逸朗著、石川戈足校訂『濃尾震誌』(明治26年3月)などがヒット、しかも当該頁にリンク。 (明治24年10月28日に濃尾大地震発生)これで書籍を探すも見落としが激減する。
便利この上なしのサービスである。
色々と検索窓に入れては、当該頁をみている。

正月早々からお勉強モード。

top

The Van Gogh Wars

2023-1-5

ゴッホ「ひまわり」返還求め訴訟 所蔵のSOMPOに米国で のニュース。

これはちょっとヤバい。

パウル・フォン・メンデルスゾーン=バルトルディ(ドイツ系ユダヤ人銀行家・コレクター:1875 年 ~1935 年)の相続人や子孫が訴訟。 ユダヤ人系の銀行に対するナチスの圧力であらゆる資産が大幅に減少させられたなかで、1935 年パウルの相続契約で手元に残った1枚。
ひまわりを含む16 点の絵画をユダヤ人の画商ポール ローゼンバーグに委託したが、ナチスの「強制売却」によって散逸。1987年のクリスティーズで安田火災海上保険(現:SOMPO)が「ひまわり」を58億円で落札。

2009年から一昨年にかけてピカソの作品も返還を求めて訴えられ、ニューヨーク近代美術館やグッゲンハイム美術館が和解や合意、ワシントン DCのナショナルギャラリーは相続人に返還される事態に。
損害保険会社の交渉力が問われている。

呑気にゴッホ「夜のカフェテラス」を「画家仲間と共に訪れたカフェを描いた(作品)」〔徳島新聞〕と嘘書いてんじゃねーよ。

top

シラバス

2023-1-9

明日から授業再開。いつまでも正月休み気分ではいけない。

いくつか山積みの仕事があるが、まずは来年度のシラバス。
昨年は前年度のコピペを行ったが、コピー元が2021年でコロナ対応のため「平常点」となっており、無理を承知で筆記試験に変更してもらった。要確認。
あと講義内容を「神道美術」(←不評)を「印象派」に変更予定。

文春で、東京国立博物館の館長が緊急寄稿「このままでは国宝を守れない」と。
なんとなく、国宝をはじめとする文化財は「財産」と考えていない輩が増えてきたのではないだろうか。

top

学務多忙

2023-1-10

卒論提出が済み、さっそく口頭試問の時間割。
今年の提出者は20名。主査・副査を入れて13本を読まねばならない。

1人20分と昼食・休憩を入れて朝9時から午後5時までのロングタイム。

早くも3月下旬に新2年次生ガイダンスも入る・・・。

多忙の由なり。

top

紅葉山

2023-1-16

事情あって「紅葉山」関連について。

紅葉山は、江戸城内にあった徳川家の霊廟。現在の宮内庁本館から下道灌濠にかけての地域。
ここに家康から6代将軍家宣(文昭院)の霊廟があった。7代吉宗の時に以後、既存の霊廟に合祀となり、新規霊廟の造営禁止と法事等の簡素化が進められたのだが、既に紅葉山に安置した御影、法会に使用された仏像はどこへ行ったのだろうか?

東京都立図書館のQ&Aには「明治元年12月19日に撤去が命ぜられ、明治2年3月から8月には撤去されている」とされるが、 旧江戸城内でよもや廃仏毀釈?そんなことはあるまい。『御用覚書』「大仏師系図」以上のことを知りたいのだが・・・。

紅葉山の仏像類はどこにある?

top

伝説の仏師

2023-1-19

他大学 大学院生からの質問。
江戸時代の仏師は奈良・平安時代の仏像をどのように理解していたのですか?

今では多数の仏師が知られ系図も造られるが、江戸時代に於いて「奈良時代」「平安時代初期」などの時代区分ではなく、「毘首羯磨」「行基御作」「慈覚大師一刀三礼」「恵(心)僧都の作」「安阿弥之作」などで区分していた(もちろん運慶、湛慶は多数)。
詳細は根立研介「仏像製作者の伝承と『名付け』をめぐる研究」(科研報告)に詳しい。

そうした「名付け」は寺伝や縁起をいっそう華やか(霊験あらたか)に彩られ、次第に霊宝となっていく。

これを根底から検討し直したのが、近代以降の彫刻史学である。
古社寺保存法で「伝運慶作」とされた作品は17件(現在の基準はゼロ)、『稿本日本帝国美術略史』では東大寺南大門金剛力士像程度、以後も5~6件と厳しいと根立氏は指摘するが、明治時代では、実際に修理した江戸時代の仏師の情報、 例えば宝暦2年(1752)に願成就院三尊像を鎌倉仏師 後藤左近義貴が修理した時の情報は採用されていない。
過去の作品を修理した仏師と研究者との意思疎通はなく、別世界のようである。

なんだか不思議。

top

補遺

2023-1-20

思い出したことがある。

寺伝や縁起が伴わない寺院の場合、江戸時代の仏師が「名付け」となる場合がある。
近世仏師は制作、修理だけでもなく「鑑定」という作業も(製作・修理機会獲得のため)重要であった。

大分・杵築市長昌寺本尊阿弥陀如来像(平安末から鎌倉初)の鑑定結果を以て、修理仏師を決めたようにも思われる。
元禄14年(1701)11月26日に法橋淨慶等が「恵心僧都阿弥陀如来極状」を、28日には法橋浄而が「御本尊御作極状」、法橋宗而が「恵心御作阿弥陀如来極状」を発給している。この折の結果やどこを修理したのかわからないが、『京羽二重』に掲載された仏師がこぞって「極状」を発給している。 なぜ彼等がと思いたくもなるが、元禄9年には「南都大仏遺材」を用いて厨子入阿弥陀三尊像を仏師浄慶が制作している。

そのほか福岡・宝典寺阿弥陀如来像(文永4年・1267)は「安阿弥正作 法橋久悦極之」とし、滋賀・西蓮寺阿弥陀如来坐像(鎌倉)は、膝前部を修理した吉野右京種次が同像を「安阿弥之作」としている。

江戸時代の仏師による仏像鑑定も「当たらぬとも遠からず」といった感じ。

top

調査

2023-1-23~24

関東地方某所で調査。

許可を得て、頭部を”抜く”。
下から見ていた時はわからなかったが、首前の正面部材が脱落し胎内に落ちている。首枘は丸枘。

躰部根幹材を彫らずに組み上げると首元が凹状になる。そのまま凹んだ部分に頭部を挿し込み、隙間を正面部材で埋めたようである。
この方法は、中国佛や九州天草地方でよく見かけるものだが、どうしてここに?という疑問が浮かぶ。

また別の坐像は、縦材で躰部根幹材の大半を組み上げている。膝前材も裳先に当たる部分のみ僅かに横材だが、ほぼ縦材。縦材だとよく研いだ鑿を使わないと鑿が傷むのだが、難なく彫り上げている。
別の頭部材。頭部(内刳り有)は一本の巨大な材を大胆(豪華?)に使用。
関東平野の真ん中で地平線の端にちょっと山が見え隠れする土地柄。ただただ驚くことばかり。

調査を終えて帰阪。
静岡あたりから雪がちらつき、名古屋では積雪、滋賀・京都では自動車のテールランプが数珠つなぎ。新幹線も徐行運転。京都を過ぎると名神の大渋滞が見えた。

新大阪でも列車が停止したまま。地下鉄に乗って予定より1時間強遅れて帰宅。
自宅周辺はひさしぶりの積雪。
昼間はちょっと寒い小春日和だったのに。

top

大混乱

2023-1-25

昨夕からの大雪でJRが大混乱。
近江塩津~兵庫・上郡まで、新三田~木津、おおさか東線で、全線運転見合わせ。

今は筆記試験期間。今日の筆記試験はすべて中止で、1月31日に延期。

その他も大幅に遅延。駅で待っていると「大雪で列車の到着が大幅に遅れています」とのアナウンス。空を見上げると青空、さすがに、ちらほら昨日の残り雪がわずかに草むらを覆うほどで、アナウンスの内容とは程遠い。
関空快速も普段は日根野で増結して8両となるが、今日は増結なしの4両(和歌山からの列車なし)。関西空港からの訪日客の大きなスーツケースが密集するなか、遅延によって停車駅から多数乗り込み、時ならぬラッシュ。

もうビックリ。

top

躰部材

2023-1-27

関東で調査をしている間に高知・長谷寺金剛力士像〔2020-9-14「まきでら長谷寺」〕の頭部が鎌倉時代の制作との報道。

“躰部”は?と、思わず連絡。すぐさま返信があって江戸時代中期のクスノキ材とのこと。
とすれば、福田院卓の制作となる。

これまで外見上での判断で室町時代とされていたが、これでひと安心。外見上の観察だけでは非常に危ういことがよくわかった。「鎌倉時代ではない、江戸時代でもない。じゃ室町時代ってところか」では全く通用しない。彫刻史もこれまで以上に構造分析はもとより樹種、年輪年代測定など総動員しなければならない時代となった。

メール文末に「あれ(外見調査)から3年が経つのですね」と。
日々精進あるのみ。

top

対 費用効果

2023-1-30

関大前ホームに長らく掲示されていたSky(株)の広告が昨年より外されてしばらくたつ。
今も空白のまま。

藤原竜也メインで、どんな新幹線に乗っても扉そばの座席上には広告が掲示され、主要駅のエスカレーター壁にもポスターが重ねて貼られている大企業。

関大前では新入社員を採用するのに対費用効果が悪いということなのだろうか。

top

岐阜

2023-1-31

最終打ち合わせに朝から岐阜へ。

ようやく、ほぼ原稿完成。
報告書全体の頁数が決まっているのにも関わらず、卒論並みの文字数となったので、ポイント数、レイアウトなどの細部調整。 大仏は大仏殿と一体の構造であるため、大仏殿の変遷とともに大仏も改修を重ねている。このあたりは最後に建築史の先生と整合性を図る予定。
あと状況をよく示す挿図1枚を掲載希望。
午後から大仏にご挨拶。
まさしく江戸後期の信仰や流行を巧みに取り入れた同期を代表する作品と自画自賛しつつ、原稿完了のご報告。

top

過去ログ