日々雑記


メモ書き

2023-7-1

とある必修科目(講義)。
プリント、パワポ配布資料だけでは学生はまったくメモしない。有難く?拝聴するのみ。

そこでファイルを一冊ずつ渡してパワポの配布資料を綴じ、毎回、配布資料にメモ書きせよとした。適宜「ノートチェック」と称して回収、確認した上で返却すると。
ところが回を重ね、各自のファイルがどんどん厚くなり重くなって、前回は両手に大きな紙袋を下げて授業に臨んだ・・・。

あさっては、何回目かの回収チェック日。
関大前のダイソーで折り畳みコンテナを購入。これと台車があれば多少楽になるはず。

昔、通勤時に手のひらいっぱいのメモ書きの若いOLを見たことがあったが、メモ書きは大切(この齢になると尚更)。

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木島櫻谷

2023-7-3

本日の授業終了、残すはあと2回。

筆記試験問題も提出し、この後は何が起こっても走り抜けることに。
「え~、最後の問題は、授業で扱っていませんので無視して下さい」というような無様なことはしたくない・・・。
走り抜けた後は、ポール・ジャクレーである。

合研に立ち寄ると「木島櫻谷」のポスター。
「きじま」じゃないよ「このしま」だよと、ポスター左上にもフリガナ。開催は泉屋博古館東京。

「最後の四条派」と称される木島櫻谷。上村松園とほぼ同世代。
京都・等持院東町にも「(財)櫻谷文庫」があるが一般公開されておらず、泉屋博古館で2013年、2017年、2021年に展示されるほど。
もっと有名になってもおかしくないのに。

ポール・ジャクレーに続く木島櫻谷。
頑張るぞ~!

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ゼミ

2023-7-4

学生のゼミ発表。今日はようやく日本美術(伊藤若冲)。

《樹花鳥獣図屏風》(静岡県立美術館蔵)と《鳥獣花木図屏風》(プライスコレクション)の比較。畢竟、佐藤康宏氏と辻惟雄氏に代表される真贋論争。

論争史を纏めるだけでもいい論文になると思ったのだが、ちょっと升目描きに拘ったのが残念。

日本美術なので厳しく言わず、「聞くところによるとプライスさんのバスルームにはタイルで出来た《鳥獣花木図屏風》が あるそうなんですが・・・」とおどけておいた。

最近、日本美術に関してはめっぽう甘い。

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仮名手本忠臣蔵

2023-7-6

とうとうこの日が来た。 講演会開始前、若干の懇談。
名刺を忘れて自己紹介。

懇談のなかで授業が学生に受ける、受けないの話から片岡愛之助氏が「仮名手本忠臣蔵」と一緒ということで、2段目は観客に受けない内容なので、あまり上演されず、5・6段目、8段目から9段目が多く上演されると。
なんか授業と同じではないか。

よく昨年と同じようにやればいいじゃないと言われるが、毎年学生が替り、そのたびに反応が違い、同じ内容を話すにしても毎年、細部を取捨選択をしている・・・と思っているうち、そろそろ本番。

「勧進帳」絡みで講師の略歴などを紹介しようと思ったが、間違っては大事になるので、メモを読み上げて講師の登場。

無事に90分の講演が終わり、急いで舞台 授業の場に駆け込む。(見得は切らない)
画像は匿名氏からのプレゼント。

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近代を捨てる美術館

2023-7-7

調べものがあって「滋賀県立近代美術館」を検索すると、「滋賀県立美術館」と出た。
あらっと思ったが、一昨年にリニューアルした際に「近代」を捨てたらしい。

振り返ると、王子公園にあった「兵庫県立近代美術館」が岩屋・海岸通りに移転した際も「兵庫県立美術館」に名称変更しており、周辺では京都国立近代美術館を除けば、和歌山県と徳島県が残るのみ。「大阪市立近代美術館」も結局「大阪中之島美術館」となった。

近代を外せば美術館活動の幅が広がると思ったのか知らないが、なんだかなぁと思ってしまう。
学生の悪評が殊のほか高かった「ゴッホ・アライブ」(ゴッホの作品が1点もなく、映像だけみせられて学生2千円!)や「Perfume COSTUME MUSEUM」などイベント会場でもできるやんか(学生のボヤキ)と、質的低下は目を覆いたくなるばかり。

学芸員もいるのだから、たまには、往年の奈良博、京博で行っていたような採算度外視の硬派な特別展を期待したいが、無理な注文か・・・。

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外国人観光客の行かない・・・

2023-7-11

昨今、外国人観光客の過剰な人出とマナー等が問題。
昨日も唐招提寺の柱にカナダ人17歳青年が爪で落書き。
親と一緒に来て「退屈」だったとの由。
気持ちは分からないわけではないが、「コロッセオ」に落書きしたカップルが炎上したことを思い出そうな。

こうなれば、岡部伊都子『観光バスの行かない・・・』(新潮文庫)のように、「外国人観光客の行かない・・・」場所を見つけないといけない。
いや、古寺に限れば、奈良・室生寺や般若寺、当麻寺、兵庫・鶴林寺、滋賀・渡岸寺など、まだまだ「外国人観光客の行かない・・・」場所はあるようにも思う。

そう考えても、ちょっと多すぎ。
今日も帰途、地下鉄で座っていると、向かいの座席に疲れたOL。
幸か不幸か、両横の座席は空席。南森町で外国人カップルが乗車、OLの左右に分かれて座ったが、OLを挟んで賑やかに会話を始める・・・。
OLはしばらく黙っていたが、北浜で下車。きっと降車駅ではないと思う。降車しながら「もう、勘弁してよ~」と思っているに違いない。

外国人カップルは、隣り合ってまだまだ絶賛会話中。こちらも「疲れてんだから、もう勘弁して。楽しい会話はホテルでもできるやん」と思ったり。
先に下車したが、以後もあの調子だろう。

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久しぶりに山越え

2023-7-13

普段より少し遅く出勤。

地下鉄堺筋線で天六。ここで車内アナウンス「阪急京都線西山天王山駅で人身事故」と。
しばし車内で待っていると、阪急淡路までは動くと。
なぜか京都線が止まると千里線まで止まる・・・。

淡路駅で「運転再開は12:00頃」とアナウンス。
げっ、あと1時間待ち?

淡路駅からJR淡路駅に行き新大阪、新大阪から地下鉄御堂筋線で緑地公園へ、その後、名神高速沿いに徒歩で大学。
大学に着いたのは正午過ぎ。3時間の長旅?であった。

昨日も桜ノ宮で人身事故があり、ダイヤが大乱れ。二日続きで気が滅入る。

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紙製仏像

2023-7-14

聖林寺観音堂紙製地蔵菩薩像が修復とのニュース。

紙製仏像は、岐阜大仏の時に探した結果、9作例あることを知った。
奈良・中宮寺文殊菩薩立像(文永6年・1269)
岩手・佐藤精三郎蔵地蔵菩薩坐像(至徳元年・1384?)
静岡・龍潭寺地蔵菩薩立像・観音菩薩立像(江戸時代)
奈良・元興寺地蔵菩薩立像(江戸時代)
兵庫・守部素盞嗚神社氏子会他聖観音菩薩立像(江戸時代)
埼玉・経蔵院地蔵菩薩立像(江戸時代)
静岡・逢初地蔵堂地蔵菩薩立像(享保10年・1725)
奈良・聖林寺地蔵菩薩立像(江戸時代)

聖林寺地蔵菩薩立像は、その折には「時期不詳」としたが、やはり江戸時代であったか。
兵庫・守部素盞嗚神社氏子会他聖観音菩薩立像は後水尾法皇が亡き子息の後光明天皇の手紙で造らせて、万治3年(1660)に泉涌寺塔頭の戒光寺に安置したという由緒を持つ。紙製仏像の多くは亡き人の手紙で造った仏像であろうか。
背面にも墨書があり、ちょっと気になる像である。

秋の講演会でちょっと触れようかなとも。

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お客様満足度90%以上?

2023-7-17

恒例の「授業評価アンケート」の提出率が悪いらしい。
学内でも稀にみる膨大な反故紙を生み出し続けた末、QRコードを付した告知文を担当教員に送る方法に変更。しかもいつの間にか大学院も含む全科目が対象。

「何回か休んだので、話(講義)がよーわからん」という受講生や「期末試験も近づいたのでそろそろ授業に出るか」という猛者(2016-12-20「お子ちゃまの匿名社会」)もいる。まして少人数のゼミでは、受講生の顔を見ただけで、理解している、なんか内容が難しいそうなのか?と判断しながら授業を進めている。
そもそも受講生一律にアンケートを取って有効なデータが得られる筈もない。

我々は損保や企業が示す「お客様満足度90%以上」を目指しているわけではない。そのために履修辞退(クーリング・オフ?)も認めているはず。

大学評価基準で必要なのは重々承知しているが、現場の実情も知らずに画面上の数値だけを見ながらああだこうだと議論していても何も生み出せない。

当り前のことながら、学生は学生であって、お客様ではない。

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紙製仏像 補遺

2023-7-18

ブログをみた学生(院生)から「紙製の仏像、まだありますよ」とご教示。

京都・興聖寺聖観音坐像(明暦2年頃・1656)
東京・浅草寺観音菩薩立像(江戸時代)

興聖寺聖観音坐像は、反故となった後光明天皇(承応3年〈1654〉崩御)の宸翰を使って養母の東福門和子が造立。背面には明暦3年、後水尾天皇の義弟にあたる聖護院門跡道晃法親王の銘記。付属の文書「後光明宸翰糊製ノ観音像の記」(明暦2年)も残る。
宇治歴史資料館『隠元渡来 : 興聖寺と万福寺』(1996年)

浅草寺観音立像は、『浅草寺什宝目録 彫刻編』に掲載されており、東福門和子が写経紙を用いて造立したと伝えられる。X線撮影もされており、木型に紙を押し当てて造形し、体側部で半截して木型を取り出して玉眼、白毫は表面から嵌めこむ手法のようである。

後水尾法皇・後光明天皇・東福門和子が近世紙製仏像のキーワードか。

院生のご示教にあつく感謝。

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こたびは吹田経由

2023-7-19

先週に引き続き、阪急京都線の車両故障。
もちろん堺筋線も運転見合わせ。
また山越えで歩くのか・・・。
しばらく考え、JR線で大阪経由JR吹田から阪急バス、という振替を思いつく。たしか「関西大学前」バス停もあったはず・・・。

JR吹田に向かいながらバス路線図をみると、「関西大学(山手ゆにわ遊園前)」バス停はなく(2019年5月末日で廃止)、「ちさと図書館」のバス停がある。これこれ・・・。

久しぶりのJR吹田駅。案内板には「年金事務所・税務署・大和大学・(抹消)」。
抹消部分は恐らく「関西大学」。
バス停の時刻表を見ると「阪急千里山駅」行は、18時台を除き、1時間に1本のみ。
なんか山形(山交バス)みたい・・・。

次のバスまで40分もある。やむなく3つの丘を越えて大学へ。
こちらのルートも2時間40分の小旅行。

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近世の仏像

2023-7-21

午前中の彫刻史(最終回)は「近世の仏像」。

本来なら、メインテーマにして15回講義したいのだが、昔、実際に行って期末レポートを求めたら「円空・木喰」1回・湛海1回の授業に集中し、「円空」「木喰」「宝山湛海」だけのレポートとなったので、辞めた。
そもそもレポートを書く段になって参考図書をみても円空・木喰以外はほぼ皆無な状況なので、内容の大幅縮小となった次第。

さっと終了する予定が、あれこれ話しているうちに授業終了近い時間まで。

終了後、大急ぎで新大阪に向かい上京。
上京後、上娘夫婦の許に訪問予定。

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ポール・ジャクレー

2023-7-22

朝から太田記念美術館「ポール・ジャクレー」展。

入館するとすぐさま「貝をもつサイパンの少年」(1934年)が展示。この極細の輪郭線は、浮世絵版画の「毛割」を転用したのだろう。その後も「空摺」(「赤い衣服」)や「布目摺」(「息子より金の要求、朝鮮」)、「ザラ版」(芸者)など。「ザラ版」を除いて江戸時代の浮世絵テクニック満載の作品である。

ジャクレーの特徴はカラフルさ。「愛妾」(連作「満州宮廷の王女」)で113度摺り、「打ち明け話の相手」(同連作・前期展示のみ)では223度摺りにも及ぶ。
もう大感動。
残念ながら戦後は、輪郭線も太くなり、「空摺」も大柄。
彫師も摺師もジャクレーも高齢になったのだろう。2Fの展示をみて1Fの「貝をもつサイパンの少年」を再び見ると、その違いに愕然とする。

昨日の一般教養科目(最終回)は浮世絵。
来季の授業でジャクレーを取り上げてみるかとも。

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木島櫻谷

2023-7-22

太田記念美術館の後は、泉屋博古館東京「木島櫻谷」展。六本木1丁目という好立地。
撮影可能なスケッチ、素描帳が並ぶ。「奈良猿沢池写生」明治24年(1891)。櫻谷15歳の作品。非凡な才能がうかがえる作品。

南禅寺塔頭南陽院本堂障壁画を見つつ、「万壑烟霧」(六曲一双)。壁にもたれてしばらく見入る。疲れていたのか齢なのか、見ているうちに涙腺が緩む・・・。作品を見ながら涙腺が緩んだのは何時の頃だろうか。
落ち着いた頃、所蔵者を見ると「株式会社千總」。そういえば、第5回内国勧業博覧会に千總が出品し2等賞受賞の「天鵞絨友禅嵐ノ図」の下絵は櫻谷の作品、第5回内国勧業博覧会は住友本邸のあった天王寺である(だから泉屋博古館)。

続いて「駅路之春」。華やぐ客と木にもたれて休む馬丁と白黒2頭の馬。桜散るなかの動と静との対比が絶妙。近代日本画はやっぱり京都だと実感。

他の作品をみながら、涙腺が緩む大感動しながら「もっと知りたい木島櫻谷」であった。

名残り惜しくも東京駅に向かう。

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粗大ごみ

2023-7-25

「2億円超の現代美術品 地下駐車場で6年保管」のニュース。

1980年代の大阪府の新美術館構想(20世紀美術コレクション)がバブル崩壊もあって2001年に新美術館計画が頓挫。府立江之子島文化芸術創造センターに置けない彫刻が、咲洲庁舎地下駐車場に保管。

そもそも作品105点の作品計2億円超とすれば、平均200万弱。「評価額」はバブル期の購入価格なので、実質は2桁落ち。しかも現代彫刻という、はぁ?というジャンル。
いい加減、大阪府は美術、特に現代美術に手を出すのはやめよう。

名前が上がった作家の作品でも100年後に「美術作品」と認められるかどうかの保証は、ない。未だ歴史の厳しいフィルターを経ていない、いわば未濾過の作品なのだから。
バブル期に買った株券が紙くずになったと思って早く処理すべき。

かつて こんな話題(2012-5-21「漫才」・2012-5-22「妄想 極めり」) もあったのに、マスコミも不勉強で煽るばかり・・・。
地下駐車場でよかったやん。相応しい保管場所が 舞洲の焼却工場だとしたら、マスコミはどう反応するのだろうか。

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筆記試験

2023-7-27

午後、筆記試験。
いつもなら、試験開始30分以降終了10分前までの退出可能時間まで1桁ほどの受験生を残して退室するのだが、なぜか今年は10名強も時間いっぱいまで答案に向かっている。

どの問題が難しいのか、出題者も首をかしげるばかり。
何時も前列で講義を聞いていた(質問もしばしばあった)学生も残っている・・・。
今期は初回ガイダンスでミスって、欠席者にはパワポもLMSで配布する旨のプリントを配ったので、さほど難しいことはないはず・・・。

ともかく春学期終了。

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錐点と福嶋長蔵

2023-7-28

東北芸術工科大学文化財保存修復研究センターより『令和4年度センター紀要』と『2015~2017年度善寶寺五百羅漢像修復報告書』をご恵贈いただく。深く感謝。

佐藤真依・柿田喜則・笹岡直美各氏「京都仏師・畑次郎右衛門による錐点技法利用についての研究」が掲載。
錐点配置には大きく6グループあるとの由。
多くの事例が必要を思うもののなかなか難しい。虫孔なのか錐点なのか、彩色や漆箔仕上げで本来は見えない錐点。

福嶋長蔵は康敬の弟子、畑治郎右衛門は康朝の弟子。もうこの時期には七条左京家に従属する仏師ではなく、独立した仏師だったのだろう。畑治郎右衛門が棟梁格で、福嶋長蔵、中村文蔵、三谷忠蔵を率いて活動していたのかも知れない。
彼らに康朝の弟子である福地善慶、井上友蔵を加えると、6名になるのだが・・・。

猛暑が続く。

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