日々雑記


危機管理 ゼロ

2023-6-2

昨夜遅くから台風2号による豪雨。
昨日から大学HPトップに「緊急のお知らせ」として「自然災害発生時の休講等の取り扱いについて」が掲載。
見ると、まずは休講等の基準。(1) 地震・津波等(2) 大雨・暴風等(ア)大阪府に大雨、暴風、暴風雪、大雪のいずれかの特別警報が発表されたとき。ここで読むのを止めた。
千里山では6月に暴風雪、大雪が降るのか・・・。
誰を対象に何を知らせるべきか、まったく理解していない。

今朝、大学に来てインフォメーションを見ると、授業支援グループから同じタイトルで、「本日(6月2日)昼頃から明日(6月3日)にかけて、大雨が見込まれます。」から始まる告知文が掲載。
こちらのほうがよっぽど分かりやすく、「登校できない、または帰宅が困難になる可能性があり早期に帰宅する等の場合は、欠席による不利益がないよう配慮しますので、身の安全を最優先に考え、適切な行動をとってください。」と結ぶ。

似た状況はコロナ発生当時(2020-4-13)もあったし、それ以前にも8:56に「終日休講」を告知した例(2018-7-6)もあった。大学HPトップの約款紹介はよくある事例。まるで車で事故った際に「保険の約款」を読めと言われるようなもの。

午前中の講義でも学生から不満続出。

「司令塔不在」と書くと約款紹介が優先される恐れもあるが、それにしても現場サイド(授業支援グループ)はたいへんである。

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どうぞ休んで下さい。

2023-6-2

午前中の講義を終えてメールを見ると、続々と今日の受講生から欠席メール。理由は、「頭痛」「体調不良」「就活」など様々。

午後には、大阪・京都・奈良・和歌山各地に「避難指示」。受講生が居住していると思しき地域も多数含まれる。欠席メールはいいから、早く避難しなさい。
命かけて聞くほどの講義でもなし、必要ならば落ち着いた後に対処するので。

相変わらず、大学HPトップの「緊急のお知らせ」は沈黙状態。

阪和線は終日運転取りやめ、南海本線・高野線も運転見合わせ。
どうして帰ろうか。

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末期症状

2023-6-6

昨日からモネ、ヴェネツィア派、ベラスケス、ターナーと授業が続き、体調急変、倒れ伏す。飯も食わずに天井を見ていると、かつての経験を思い出した。

旧職場。
異動の折は「工芸」担当。
そのうち「仏教美術」担当者が退職し、その後「絵画」担当者が人事異動。人事補充もなく、旧職場末期には、ひとりで「工芸」「仏教美術」「絵画」を担当していた。
人事名簿上は歴史プロパー(←関大卒)が「歴史」「美術」と記され、表面上は配置が整っている体裁。
あの時の状況と酷似。

こちらの退職後は、さすがに新規採用人事が行われ、現在では非常勤職員も含め「美術史」3名体制に。

歴史は繰り返すというが、全くもってその通り。

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誕生日

2023-6-7

家人からもらった「弘法大師ご誕生1250年」のチラシ。
なんとなく違和感。

仏教で誕生を祝うのは釈尊(生年は諸説あるので誕生日だけだが)だけと思っていたが、近代に入ると宗祖の誕生年も奉祝行事に含まれるようにも思う。
浄土真宗の「親鸞聖人降誕会」も本願寺本山では明治7年(1874)以降のこと。この流れを受けて過日には京博で「親鸞聖人生誕850年特別展『親鸞―生涯と名宝』」が開催されたが、江戸時代までは「遠忌」のみが法要・行事の対象であった。
大きな遠忌に際して仏像や仏画が制作・修理された。

宗祖の誕生年奉祝行事もキリスト教(クリスマス)の影響なのかと思ってしまう。

我が家の6月は"降誕会"が目白押し。

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受講生が選ぶ鳥獣戯画ベストシーン

2023-6-9

先週(豪雨)の初年次生授業で、鳥獣戯画甲巻でいいと思った場面を選んで下さいとミニッツペーパー。その結果発表(提出者19名、複数回答有り)。

1票:第3紙 子鹿にまたがる兎、第6紙 賭弓、第10紙 賭弓に遅刻した兎、第21紙 法要傍の幹にとまっているフクロウ。

2票:第2紙 猿の背中に水をかける兎、第11紙 猿僧侶へ鹿と猪のプレゼント、第13紙 逃げる猿を兎と蛙が追いかける、第21紙 蛙の仏像前での法要。

3票:第14紙 ひっくり返った蛙を取り巻く動物。

4票:第17・18紙 兎と蛙の相撲。
(*番外〈論外〉)カエルやウサギなどが一緒に踊っている場面

やっぱり教科書でおなじみのシーンであったか。

それにしてもいくら欠席していたとは言え、カエルと兎のダンスはないやろ。

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似たような話

2023-6-12

文化財の接着剤(膠)で原料「偽装」のニュース。

膠については大昔、魚からも出来ると鶴田武良氏からご教示を受けた(2014-06-04 魚膠)が、一般には牛膠である。
ニュースでは「信じがたいが、輸入元が原料を偽れば確認のしようがない」ともするが、仏画家の方が呟いておられたように昔もそう厳密(純粋)でなかったようにも思う。
兎膠が必要ならば、輸入元(海外)に頼らず、自家で造ればよいだけである。

似たような話を思い出した。
かつて美福門院発願の紺紙金泥経に「金泥」「黄銅(真鍮)泥」が使われていたとの報道があった。(2014-04-22 紺紙金泥経)
これについては、既に早川泰弘氏・城野誠治氏の報告論文〔『保存科学』56・60号〕も出ている。

なんとなく、「日本における膠使用の歴史」で論文が書けそうにも思えるニュースだが、憤っていても仕方ない。

膠で思い出すことも。
若い頃に「三千本膠」を3000本の膠と理解して発表し、やんわりと質疑応答で訂正を求められたことも。
今なら間違わないのだが、若かりし頃の無知である。

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ポール・ジャクレー

2023-6-13

5時限(16:20~17:50)の授業が終わって、後片付けをしているとゼミ生が来る。

「明日から東京に行くのですが、時間に余裕があるのでどこか、いい展覧会していませんか?」と。
「それなら原宿の太田記念美術館『ポール・ジャクレー展』です!!」。

片付け途中だったPCで太田記念美術館のポール・ジャクレー展の紹介をみながら、「面白いですよ、是非とも」と。

大正新版画よりちょっと遅れた碧眼の浮世絵師である。戦前、日本の委任統治領であった南洋諸島などにも出向き、今日でも通用しそうな浮世絵木版画を制作している。
「ぜひとも行きます!」と返事。

フットワークの軽い学生に先を越されてしまった・・・。こちらは早くても7月半ば。

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髑髏

2023-6-15

17世紀オランダ画家 ヤン・ステーンが描いた《男の人生(The Life of Man)》(1665年・マウリッツハイス)。

居酒屋で人々が食事や飲酒、喫煙し、ゲームや音楽を楽しみ、男女がお互いに気を惹きあう様子を描いている。右のテーブル下では少年が猫の前脚をもって遊び、猫も2足で仁王立ち。
典型的な風俗画である。

しかし画面中央奥の天井裏には潜んだ少年がシャボン玉を吹いており、その横には髑髏。
典型的なヴァニタス画。

ここからが難関?。
オランダの風俗画にはヴァニタスを描いた作品が多いが、なんでオランダなのだろうか。プロテスタントのカルヴァン派に繋がるとみているのだが、どうつながってくるのかが、問題である。

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故障

2023-6-16

日本彫刻史の授業がそろそろ終わりに近づいた時、突如プロジェクターが写らなくなる。
やむなく、照明を付けて、配布スライドリストを見ながら説明。

ミニシアターの教室(2013-4-5)になり丸10年。そろそろ機器交換の時期か・・・。

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アリ・ルドン

2023-6-20

今日のゼミ発表はオディロン・ルドン。
まっくろくろすけと元祖 目玉親爺の画家である。

長い間、木炭画とリトグラフというモノクロームの作品を制作していたが、1880年、40歳の時にカミーユ・ファルテと結婚、1886年にジャンが生まれるも僅か半年で夭折し、1889年にはアリが生まれた。
ここからルドンはカラフルな色彩に目覚めていく。

「子は鎹」というが、画家(父親)の作風も変えるものだと妙に納得。
第一次世界大戦中に兵士となったアリが行方不明となり、ルドンは各地でアリの消息を探すが、無理がたたって1916年にパリの自宅で死去。

ところで、まっくろくろすけと元祖 目玉親爺の発想がどこからきたのだろうかと疑問に思う。

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天部像

2023-6-21

久しぶりに某所でカメラマンや関係者と仏像対応。

3尺の菩薩像と5尺の天部像で、共に一木造、内刳り皆無の像。
共に過去に須弥壇から降ろしたことがあり、3尺像は難なく降ろせたが、5尺の天部像にはかなりてこずった。
三叉戟も本来なら戟先端の穂先部分で継いであり、そこで外すことが出来たが、過去にボンドで密着してあり、須弥壇から三叉戟を付けたまま本体を畳まで降ろして、そこで戟を抜かねばならない。
クスノキ材、5尺、内刳り皆無の天部像は、殊の外重い。

今も昔もカメラマンの撮影タイムが自由に観察できる時間。撮影の邪魔にならないように反射板の陰で、じっくりと仏像拝見。
以前、気づかなかった点も見出し観察を続けていると、「撮影終了です」とカメラマン。

降ろした時と同じように、ひと苦労しながら須弥壇にお戻し。

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2023年度版 印象に残る仏像

2023-6-23

恒例の初年次授業での「印象に残る仏像」。(提出者18名、複数回答有り)。
昨年はこちら(2022-5-13「印象に残る仏像」)

5票:五劫思惟阿弥陀仏坐像…授業で扱った作品。
4票:東大寺盧舎那仏像…授業で扱った。
3票:興福寺阿修羅像…定番。
2票:三十三間堂千手観音立像・坐像、広隆寺弥勒菩薩半跏思惟像。
1票:平等院鳳凰堂阿弥陀如来坐像・雲中供養菩薩像、法華寺文殊菩薩坐像(授業で扱った)、金峯山寺蔵王権現立像、六波羅蜜寺空也上人像、浄土寺阿弥陀三尊像、福岡・南蔵院釈迦涅槃像、半蔵門ミュージアム大日如来坐像(しぶい!)。

疑問票:五重塔の内部にある月光菩薩像。
コメントでは、母と東大寺に行った際に、偶然五重塔の内部が公開中で見ることができたとの由。残念ながら東大寺に五重塔はない。興福寺五重塔かと思うも、塔内に月光菩薩像はない・・・。
いったい、どこやろ?

それにしても未提出者35名、4月入学の1年生ながら、ええ根性してるやないか。
やる気がないなら授業に来るな。ガチで不可にしてやる。

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鳥仏師

2023-6-24

奈良町・中筋町の仏師屋三太夫、宇(右)兵衛。制作・修理した仏像での肩書は「鞍部村主司馬達等 鳥大仏師 右兵衛」。

近世仏師の肩書は、京都では「定朝末孫〇〇世」(これは現在でも使用)、鎌倉は「運慶之末有」「運慶末弟」。
系図上では、運慶末裔にあたる京都七条仏師康知ですら「七条大仏師二十五代従運慶/十九代孫法眼康知」(妙心寺花園法皇像)と、定朝から25代目、運慶から19代目と、定朝からの代数が先行。運慶は決して「(定朝)六代」と名乗っていないが、これは傍流(弟子の康慶)の意識があったのだろうか。
ともかく、各仏師が拠り所とする仏師が異なり、地域色が出ていて興味深い。

右兵衛、三太夫の祖は、司馬達等(仏師鞍作止利の祖父)なのか・・・。
なんか、世界最古の会社とされる金剛組(総合・社寺建築)をみているような感覚。

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物忘れ

2023-6-26

朝、お茶・煙草を買おうと、駅のコンビニで並んでいる間カバンをごそごそ。ん?財布がない・・・。しゃーない、お金を降ろすかとお茶を元の棚に戻しながらコンビニを出て、更にカバンをごそごそ。

キャッシュカードもないと、気づいて思い当ることが。
昨日は車で買い物に出掛けカードの入った免許証パス、財布をショルダーバックに入れたまま!!。ICOCA定期にも残金56円、万事休す。

通勤カバンの底を浚うと、百円玉3枚、5円、1円玉が若干。辛うじて、おにぎりひとつ、お茶を買うことが出来た・・・。

もう紙に書いておかないと、全てが忘却の彼方に向かう齢である。

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くるみ小女子

2023-6-27

只今、家人上京中。
帰宅後、冷蔵庫から「くぎ煮」を見つけ肴にして晩酌。

貼られたラベルには「くるみ小女子」と。下の小さな文字にも「本製品で使用している小女子は、えび・かにが混ざる漁法で採取しています。」とも。はぁ?
何と読むのか?そもそも「小女子」って何のこと?
よもや「しょうじょし」ではないと思うが。

飲みながら調べると、「小女子(こうなご)=いかなごの稚魚」とあった。「小さいおなご」が訛って「小女子(こうなご)」となったのだろうか。雄(男子)もいるだろうに。

急に酔いが回り、残っていた「小女子」でもう一杯飲むことにする。
飲兵衛の弁明。

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要 取り扱い注意

2023-6-27

とある知己の方(同業者)からの質問。
「某展に出品の御像、鎌倉時代ってなってますが、正しいのでしょうか?」。

カタログを見れば、国の重要文化財指定品。
ニヤリとしながら「重要文化財なので、正しいのではないですか」と。
指定年は1960年。この事例「2022-6-2(旧国宝)」を引くまでもなく、現在では要検討物件だろう。
ニヤリとしたことで「やっぱり、江戸(時代)ですよね・・・」と。

「とはいえ、所蔵寺院も市町村や県もそれで了解し誇りとしているので、今さら制作時期が異なるからと指定解除も出来ないじゃないですか。解体修理で何か決定的なことが分かっても、さらっと『江戸時代の名品』で通せるじゃないですか。寝た子を起こすものではありません」と。

少しがっかりされたようで、別件で関連する「要取り扱い注意」の文書を後で送ることに。励まさないといけないところ、ダメ出しして、どうすんねん。

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運慶の口伝

2023-6-29

儒学者、室鳩巣が享保17年(1732)に著した『駿台雑話』に「運慶が口伝」がある。
或人仏師運慶が口伝とて語しは、仏を作るには耳鼻をば先大きにすべし。もし耳鼻を十分能程に斲(けづ)れば、後に小さく見ゆる時に、大きにしたくてもかなはず。口目をば先小さくすべし。もし口目を十分よき程にあくれば、後にもし大きに見ゆる時に、小さくしたくてもかなはず。されば耳鼻を大きにし、口目を小さくするを第一の口伝とするとぞ。
或人語る「運慶の口伝」は何の根拠もないが、言わんとしていることはよくわかる。
山崎隆之氏「仏像の造像比例法-錐点について」を見ても、正中だけでなく、耳孔部分と耳朶部分に錐点がある。鼻部分に錐点はないが、髪際正中と下唇には錐点があって鼻の大きさもほぼ推定できる。

「或人」は仏師で、若い修業時代に結構苦い経験があったのではなかったかと妄想。

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飛び火

2023-6-30

振替授業(2023-5-31 お互い若くはない)の受講生のみならず、こちらにも昵懇の仲である某先生と学長課からメールが届く。
某先生曰く「どうやら慣例で振り替えをお願いをした先生に司会をお願いする、となってるようで・・・」と。

いやいや、待て待て。昨秋の講演会も振替授業で対応したが、そんな話はなかったので、後方座席で静かに講演を拝聴していたぞ。
すぐさま、学長課からもメールで当日スケジュールが届き、「・司会:長谷先生」となっている。メールを確認しながらこれもお仕事の一環と、諦めて了承する。

幸い「質疑応答」は講師で客員教授の片岡愛之助氏がされるようなので、ちょっと安堵。

「他所に振ることの出来る仕事は職権乱用でバンバン振って」と書いたが、よもやこちらに振られるとは思い及ばなかった。講演会が終わったら、ビール1本、オゴリやで。

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