OG・OB紹介

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個性を活かした人材活用で新しい社会の実現を vol.15 高橋慎太郎

■銀行での貴重な経験

 「世の中は銀行を中心に動いている。」私が小学生のころ、父が繰り返し話してくれたことです。当時はよくわかっていませんでしたが、大学を卒業して実際に就職してみると、その重要性を実感することになります。
 銀行では産業界のお金の流れを目の当たりにして仕事をします。 企業で財務に関する仕事をしているのは経営者や部長クラスの方がほとんどですが、そんな人たちと商談をする日々は、20代前半の私にとって非常に刺激的で、 学びが多い時間になりました。 様々な業界について勉強をしたり、事業計画に採算性があるのかを検証したり。 融資先の決算書だけではなくテレビや新聞のチェック、業界紙で情報収集を重ね、自分なりの考えで上司を説得する日々でした。当初は上司からの質問に返答できず、稟議決裁までに時間がかかりましたが、何千万円、何億円という資金を融通するためには当然のことだったと思います。
 銀行を退職した今、実感していることは現金でも電子マネーでも仮想通貨でもビジネスにおける価値交換媒体として通貨がどんな役割をしているのか、これは物事の本質を考えるうえで非常に重要ということです。クラウドファンディングのように資金調達の方法が多様化したとしても、それは変わらないと思っています。

■家業へ、そして新しい社会の実現を目指して。

 銀行に5年間勤めたあとは、家業であるコスモ食品に入社しました。コスモ食品は天ぷらや揚げ玉などを製造する食品メーカーです。入社後の現場研修では、人材活用について大きな可能性を感じることになります。 弊社では海外メーカーとの競争に勝つために、多くの国内PB商品の製造をさせていただいています。いわゆる多品種少量生産型の製造スタイルで、お客様の「こだわり」をカタチにすることが目標です。ただ、工程が複雑になればなるほど製造工程の自動化は難しくなり、工場では種類の異なる段ボール箱の組み立てや、数種類の製品の検品などの単一業務を人の手で何時間も継続して担当することもあります。これは集中力と根気が求められる業務です。
 そこで着目したのが障害者の雇用です。担当業務は限られていても、一つのことを 継続することには長けている人が多いのです。集中力と根気も十分です。もちろん訓練が必要ですし、人によって得手不得手はあります。また、工場長など現場管理者にも、適材適所で人材を配置できるように見極める能力も重要になってきます。
 日本には障害者の法定雇用率を達成していない企業が多くありますが、2020年4月時点、弊社での雇用人数は11名です(社員数140名、法定雇用人数は2.46名)。
 人の個性は様々です。せっかちな人もいればのんびりな人もいる。コミュニケーションをとるのは苦手だが、黙々と作業するのが得意な人もいる。組織の目標達成に応じて、そうした個性を上手に活かすことが重要だと考えています。
 人材活用の場においては、障害を個性と捉え、活かす。そんな発想でダイバーシティマネジメントが多くの企業で推進される社会になることを願っています。

■後輩のみなさんへ

 ゼミの研究活動では自分の甘さを痛感することもあるかもしれません。しかし、それを乗り越えるために、前に進むために何が足りないのかを適切に指導してくれるのが矢田ゼミだと思います。私は学生当時、納得のいく研究成果をだすことができず、ただひたすらに厳しいゼミだな、と思っていました。しかし、大学4年生の後半になると自分が変わってきていることに気づくのです。どんなことにも理由やそこに至るまでのストーリーがあります。それを考えて、調べて自分なりに納得のいく答えがみえてくると、考えや意見にも自信がついてきます。そうすると、失敗したときにも、素直に考え直すこともできるようになります。そんな日々はきっとあなたの人生の指針になるでしょう。 大学生活では自分のやってみたいことにとことんチャレンジすれば、悔いのない学生生活になると思います。

高橋慎太郎 

2004年4月商工組合中央金庫、法人融資を5年間担当。

2009年4月コスモ食品株式会社、2012年取締役、2015年専務取締役。

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