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表現論ゼミ紹介
表現論と聞くと、文章やメディアの表現を研究する分野と思われる方もいるかもしれませんが、整数論や確率論などと並ぶ数学の一分野 です。
群や環などの代数系は高度に抽象的なので、そのままでは扱いにくい場合が多々あります。このようなとき、それらの代数系を行列で 「表現」し、線形代数的手法を用いて研究することができます。1つの表現から得られる情報は一般に少ないのですが、表現を複数考え る、極端な場合にはすべての表現を考えることにより、群や環のことを完全に知ることができることもあります。表現論とは上述の方法に より、群や環などの代数系の性質を研究する分野を指します。最近では、結び目、グラフ、多様体などの幾何学的対象を表現論の観点から 研究したり、代数の表現論を上手く利用して研究する方法が開発されており、このような研究を通じて、代数と低次元トポロジーと数理物 理とが相互に密接に関連していることが明らかになってきています。
当研究室では、代数・幾何・解析の枠組みにとらわれず、幅広く表現論を研究しています。幾何学(特に、トポロジー)に興味がある 人、代数を使って幾 何の問題を解くことに関心がある人、逆に、幾何的な考察により代数の問題を解くことに関心がある人を求めます。期待する予備知識としては、2年次までの線 形代数、集合・写像・ 論理、位相、群論、微積分の基礎です。
過去にゼミで読んだテキストは下の一覧表にあります。2024年度は村上斉著『結び目のはなし』と松本幸夫著『モース理論の基 礎』を読みました。
参考のため、4年生のゼミで用いたいと思っているテキストの候補をいくつか挙げておきます。 (これは目安です。相談により他のテキストにすることもあります。)川崎徹郎・著『文様の幾何学』
今井淳・寺尾宏明・中村博昭・著『不変量と対称性』枡田幹也・福川由貴子・著『格子からみえる数学』
Cromwell・著『Knots and links』(結び目と絡み目)
Fulton・著『Young tableaux』(ヤング図形)
Kassel・Turaev・共著『Braid groups』(組み紐群)
Schiffler・著『Quiver representations』(クイバーの表現論)
発表者には発表内容の詳しい説明を、あらかじめレポート用紙にまとめてきてもらっています。発表者以外の人はそのコピーを見な がら、 発表内容を聴きます。発表者はまとめを手元に持ちながら発表することができますが、一字一句それを板書するために持つわけではありません。 話の流れを確認したり、言い忘れたことはないかを確認したりするために、ときどき眺める程度に見るのが理想的です。最初のうちは 難しいかもしれませんが、これを続けていくことで、プレゼンテーション力がついていきます。また、一所懸命にまとめを作成するこ とにより、伝えたい内容を的確に表現する力、 複数のことを論理的に組み立てる力が身に付き、物事を深く理解する力が養われます。そして、毎回ゼミでやった内容が記録として残 るので、 復習に役立ち、卒論の作成時に慌てることもありません。卒業後には大学生活の良き思い出にもなることでしょう。
学部4年ゼミ生の卒業論文または卒論発表会スライド
年 度 |
ゼミで使用した本 |
卒論の題名
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卒論またはスライドのpdf ファイル |
2010 年度 | Nagpaul・Jain共著『Topics in applied abstract algebra』 |
Polyaの定理とPattern
Inventory
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2011年度 |
志賀弘典・著 『数学の視界』 | 15ゲームの群論的考察 |
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鏡映を用いた3次元多面体の決定 |
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2013年度 |
草場公邦・著 『行列特論』 | グラフと表現 |
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3辺3頂点からなるquiver algebra
の表現論の研究—indecomposable projective modules の決定— |
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2014年度 |
河野俊丈・著 『組みひもの数理』 | 淡路結びのジョーンズ多項式 |
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ディラックのストリングゲームを解く |
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2015年度 |
Allen Hatcher・著 『Algebraic Topology』 | Wirtinger表示による結び目群の計算と対称群
への表現 |
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正多面体の回転による商空間の基本群 |
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クラインの壺の二重被覆,
四重被覆の決定とそれらの関係性 |
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2016年度 | 樹下眞一・著『位相幾何学入門』/ 河内明夫・著『レクチャー結び目理論』 |
TWO-TYPE TANGLES からなる PRETZEL LINKS に対する
GOERITZ INVARIANTS について |
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2017年度 |
阿原一志、逆井卓也・著
『パズルゲームで楽しむ写像類群入門』/Lima・著『Fundamental groups and
covering spaces』 |
デーンツイストを用いた閉曲面上の単純閉曲線のパズル
とその解き方 |
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射影空間の基本群とその応用 |
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2018年度 |
筱田健一・著 『対称性の数学 繰り返し模様に潜む幾何と代数』 |
サッカーボールの模様の数学的分類 |
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フリーズパターンと多角形の三角形分割 |
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2020年度 | Aigner著『Markov's Theorem and 100 years of the uniqueness conjecture』 | Some relation of F-polynomials between
horizontal and vertical snake graphs |
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2021年度 |
小林吹代・著 『ピタゴラス数を生み出す行列のはなし』 |
Pythagorian triples tree
and Stern-Brocot tree |
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連分数による120度のピタゴラス数の漸化式 |
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2022 年度 | C.アダムス・著(金信泰造・ 訳)『結び目の数学--結び目理論への初等的入門』 | 三葉結び目と8の字結び目のホワイトヘッドダブルの彩色数 |
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n段のメビウスのはしごの山田多項式 |
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籠目結びのアレクサンダー多項式--行列に基づく計算と考察-- |
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2-組み紐の2変数ジョーンズ多項式 |
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結び目を組み紐へと紐解く |
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2024年度 |
村上斉『結び目のはなし』[新装版] |
結び目のガウス整数を使った彩色数の計算 |
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交点数が7以下の結び目のホワイトヘッドダブルの彩色可能性 |
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松本幸夫『Morse理論の基礎』 |
Heegaard図式で表された4次元多様体の基本群 |
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大学院生の修士論文
年 度 |
修士論文の題名 |
修論[改訂版]のpdfファイル |
2013年度 | 正規化された山田多項式から得られるθ-curveに対する
Vassiliev不変量 |
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2022年度 |
アフィンA型quiverに関連するmaximal green
sequenceと分配級数 |
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大学院生の博士論文
2023年度 任キン(Xin Ren), On q-deformed rational numbers and real numbers, 論 文要旨(関西大学学術リポジトリ)